第853話:モクア・シアロイア~豆腐の角~

「君の死因は?」

 死因を語り合う会、変な会合だとは思うがここに集まってくる奴らは基本的に愉快な死に方をしているため、話を聞きに来るだけで楽しい。

 会場では基本的に自由、語り合う会とは言っても壇上で「私の死因は~」なんて発表することはなく、フリーのパーティ会場で入場自由で開催されている。

 単純にここに集まった人が雑談のテーマとして1つ死因というものを共通に持っているというだけだ。

「最近は新しい顔来ませんねぇ」

 そうぼやくのは釣った魚が額に刺さって死んだ人で、かれこれこの会で顔を合わせるのは8回目ぐらいだろうか。

 額をさする癖がある、死因ゆえかと思っていたがその癖は昔からあり、デコが光るぐらいさすっていたからそこをめがけて魚が突っ込んできたらしい。

「空中で泳ぐんですかその魚は」と突っ込んだことをよく覚えている。ちなみに泳ぐらしい。

「まぁ、なじみで集まって駄弁る会と考えれば楽しいですよこれも」

「とは言ってもなぁ、話してぇ。デコに魚が刺さった話がしてぇ」

「いやぁ、今聞いても珍しい死に方で面白い話ですよ」

「新鮮な驚きが欲しいんだよぉ!」

「分かります分かります、僕も新しい話が聞いてみたいですし」

 面白い死に方をした人は基本的に何か持っているのか、最近の話を聞いてもそれなりに面白いんだけど、やっぱり死んだときの話が不謹慎で余計笑えるので死んだときの面白い話が聞きたい。

「そういや、お前は何で死んだんだっけか? 最初に一回聞いたきりで忘れちまったい」

「僕の話はあんまりおもしろくないですよ、豆腐ですから」

「豆腐ってーと、あー! 豆腐の角で頭打って死んだ奴か! すげーよなぁ、どうやったら豆腐の角で頭打って死ねるんだ?」

「さぁ、僕もさっぱりです」

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