第831話:サイカ・ゾイノ~朝の~

 昨日は一晩中雨が降っていた。

 その音のせいで眠りが浅かったのか、今朝は早く起きた。

 日が灯る前に目が覚めてしまった。

「さむ……」

 布団から出ると、もうそもそも寒くなってきている時期で、まだ日が灯っていないから、やけに寒い。

 窓の外を見ると、雨はやんでいて、それでいて空は曇っていた。


 朝の身支度だけ整えて、ご飯を食べずに靴を履く、それぐらいになってようやく日は灯ったようで、少しだけ外は明るくなった。

「ふぅー」

 吐いた息は白く、また昼頃に雨が降りそうだなぁと思いながら、街に出る。

 まだ朝が早いこともあって、明るくなっているにもかかわらずいくつかの街灯は点いたままで、水たまりを照らす以外は雲越しの日の光に負けていた。

「あ、ネコ」

 道の隅っこを歩く猫は毛皮があってもなお寒そうで、風が吹いていないのだけが幸いという感じ。

 いつも朝に食べに行くお店で軽めの朝食を取って、暖かい店内から出たくないと店主とぼやきつつも、食後に一杯だけ飲んで店を後にした。


「ん、寒そうだね」

 おなかに熱のある物を入れて、精神的にもぽかぽかになっていた私は、帰路でも見かけたノラネコに声をかけて、逃げられて、寂しく一人で家に帰ることになった。

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