第827話:・~記号名~

「あの、この記入してもらった名前のこれ……、「・」ってなんて読むんですか?」

「好きに読んでもらって構いませんよ、識別名としての・ですから」

「はぁではハクナさんと呼ばせてもらいます」

 死後の世界で名前を聞かれ、答えた名は「・」、区切り文字、もしくはただの点、もしくは黒い丸。

 そういう表記で音は決まっていないからと好きに読んでもらっているわけだが、これがなかなか今までに無い呼び方が集まる。


「やぁナカグロ、なかなか景気がよさそうじゃあないか。何か俺に奢ってくれる気はないかい」

「いいや、普段どおり素寒貧さ。役所の書類も処理に時間がかかるもんでな、支援金が出ないんだ」

「ナカグロ?ポッチじゃあないの?」

「うちではそう呼ぶのさ、君のところではポッチ?」

「そう、ポッチ

「ほぉーん、まぁそう呼ぶかもな」

ナカグロでもポッチでもいいよ、とりあえずいつものように飯を奢ることはないぞ。いつもこういうやり取りをしてると思うが、なんでいつもそう声を書けてくるんだお前は」

「いやなにな、ナカグロってーたらうちでは商売の神様ってもんで な? あやかれるかなぁと」

「それはお前がそう呼んでるだけだろ、別の呼び方にしろもう」

「ラガルドさんもポッチって呼べばいいじゃないですか」

「いやだよ、デボンとでも呼ぶぜ」

「それは、どういう意味なんだ……?」

「単純に点って意味だよ、まぁこれからも集りには来るけどな」

「なんでだ」

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