第788話:ズーム・スゥ~鈍感ボーイ~
「ねぇ、雪降ってるよ」
「ああ、そうだな」
指摘された通り、空からは白い雪が降り始めていた。
「寒くないの?」
「寒くないよ、知ってるだろ?」
普通は雪が降るような気温を寒いと感じるんだったか、久々に言われたから忘れていた。
通りで手の先が冷えて軽い痛みを感じるわけだ。
「寒くないわけないでしょ」
「僕の体は鈍感なんだ、この程度を寒いなんて感じない」
「感じないだけで寒さで体壊したの覚えてないの? また体壊して死んじゃうよ?」
「死なないよ、現に今まで君が指摘してなくても死ななかっただろ?」
「話は聞いてるよ、病院に担ぎ込まれたこと20回を超えるそうね」
「どこでそれを?」
「この世界に来たばかりの頃、案内人さんに聞いたの。どうせあんたのことだからこの世界でも鈍感だからって無茶してるんだろうって思って」
「……別に、わからないんだ。体が鈍感だから。寒いのか、熱いのか、痛いのか。だから避けようがない」
「嘘つき、知ってるんだからね。心が鈍感なのを体が鈍感なせいにしてごまかしてる、知ってるんだからね。あんたはちゃんと熱さも寒さも感じるし、痛みだってある。だけどそれを気にしてないだけだってこと」
「どちらでも関係ないだろ、体が痛んでも心が痛まなかったら」
「死んでもいいって思ってるくせに」
「思っちゃいない」
「生きてたいわけでもないんでしょ?」
「そうだな」
寒さのせいだろう、胸当たりにズクズクとした微かな痛みがあるのは。
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