第735話:オイニン・ユーロウ~真実が見えるメガネ~
「メガネ?」
「そう、メガネ」
久々に出会った友人から手渡されたのは紛うことなきメガネだった。
「いや、俺の目は悪くないんだが……」
「いやいや、このメガネは視力矯正用のメガネじゃあないさ」
「じゃあなんだってんだ?」
「こいつはな、見えないものが見えるようになるメガネさ」
「ARか?」
ちょっと前に流行ったよな、AR。
最近はめっきり見なくなったような気もする。
「違う違う、そんなちゃちなもんと一緒にするない。ていうか今時ARでメガネもないだろ」
「じゃあ何が見えるってんだ」
「真実さ」
「真実ぅ?」
騙されてるんじゃないのか、という言葉が喉元まで出かかったが、なんとか飲み込んだ。
「まぁ掛けてみなって」
「掛けてみるけども……」
促されるままにメガネを掛けるが、なんにも見えない。
「何にも見えないんだが」
「それはここに真実が無いからだな」
「はぁ?」
「ここには真実が無いのさ、虚構の世界。はやく目を覚ませ」
「何を言って……」
「ピピピピピピピピ」
「なんだなんだ、いきなり変な声を出して」
「ピピピピピピピピ」
「おいおいその音を止めろ」
ピピピピピピピピ
夢だった。
最後の方で聞いた音は目覚まし時計の音で、確かに夢の中で、真実は無かったのかもしれない。
ふと気づくと、枕元に夢で見たメガネが置かれていて、背筋が寒くなる。
よく思い出してみれば、レンズ越しにもメガネのフレームは見えていたような気がする。
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