第695話:マルカノ-コーズア~誰もいない日~

 朝自然と目が覚めて、ふと違和感に気付く。

 そういえば、いつも起こしに来る同居人が今日は早くから出かけると言っていた。

 ほぼ住んでいる同然に入り浸りの友人も今日は珍しく家に帰ったし、来客の予定もない。

 かといって外に出る用事もなく、珍しく今日は家には誰もいない日となる。

「どうしようかな」

 誰もいない日なんていうのは珍しくて、常にだれかいるものだから何をしようか考えちゃうな。

 とりあえず……、朝飯でも食うか。

 調子がズレて、着替えるのを忘れ寝巻のまま食堂に向かうが、当然のように朝食は用意されてなかった。

 代わりに書置き、

『いつ起きるかわからないから朝ごはんは自分で作ってね』

 とのこと。

「まぁ、」しかたないか、と口の中で呟き簡単な朝食を適当に用意した。

 モソモソと保存用の固形食を食べながら、今日はどうするか考える。

「……街の方、行ってみようかな」

 普段は一人では出かけることなんてないし、普段とは違う発見があるかもしれない。

 とりあえず、どこかへ出かけようと、ちゃっちゃと食べたゴミを片付けて、まだ寝巻だったことを思い出して一度部屋に戻る。


 一人あてもなく街を歩く。

 不思議なことに誰もいない。

 街中っていうのは、こうも人がいないものだっただろうか。

 まさか、一斉に全員が旅行に行っているわけでもないだろう。

 人が経営しているお店はどこも開いていないし、不思議を通り越して不気味だ。

 だんだん誰もいないのに慣れてきたので、無人の映画館に入ることにした。


 他に人もいないのに、しっかり静かに行儀よく見てしまった……。

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