第670話:メフィガル。~地下鉄ルーピング~

 カタンカタンとリズムの良い音が響く。

 地下を走るこの電車、いつから乗っていただろうか。

 昔廃墟の駅を探検していた時、もう動かないと思って乗った電車がどういう訳か突然発車して、それっきりここに閉じ込められているというわけだ。

 電車の中は走ってはいるが、灯りはついておらず手持ちのランタンの灯りだけが頼りだ。

 だからいつも点けているわけにはいかないのだけど、逆にいつ点けたらいいのかわからなくなって結局電車の中で変な物音がしたとき以外にはつけていない。

 だいたい網棚に残されていた誰かの忘れ物が電車の揺れで落ちた音なのだが……

 どうしても気になって見に行ってしまう。

 もし誰かほかに人がいたら話を聞けるだろうし。

 走っている時の感覚からどうやらこの電車は環状線らしく、同じところをぐるぐる回っているだけのようで、外の景色もほとんど変わらず、たまに明かりのついていない駅のようなものを通り過ぎるだけで止まった記憶はない。


 常に暗くて昼も夜もないが、時計は持っているので何とか時間の感覚を失っていないが、日付は考えるのをやめるぐらいには経過しているのは確かで、もはや死ぬまでここで暮らすんじゃないかとも思うようになってきた。


 カタンカタンといいリズムが眠気を誘うから、寝るには困らないんだよな……。

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