第658話:カホノ・ソレア~宝探し~

「さて、どこから探す?」

 宝の地図の場所まで来たのはいいけど、地図には詳しい場所は書いていない。

「ていうか、本当にこんな町中に宝が埋まってるの?」

 マオはまだ疑っているようだ。

「バカね、こんな町中だからよ。まさか誰もこんな町中に宝物が隠されているとは思わないでしょ? 裏をかくのよ裏を」

 マオは「一理ある」とでも言いたげな顔で私の話を聞いている。

「宝物と言えば埋まっているっていう固定観念の裏をね」

 どや! 決まったやろ!

 これは頭の固いマオとはいえ納得せざるを得まい。


「それでアラナ、どこに宝物あるかわかった?」

 さっきからずっと地図を見ていたアラナに聞いてみる。

「え? あー、そうね? まだよくわからないから、適当に歩いて探してみたらいいんじゃない?」

「そう? じゃあマオ、先に探しに行きましょう」

 アラナはとりあえず拠点にと入ったカフェにいったん置いてマオと二人で脚を使って探すことにした。


「ねぇカホノ、そもそも宝物ってなんなの?」

「え?」

「いやだから、宝物がどんなものなのかって話よ。何を探していいかわからないと探しようがないじゃない?」

 そういえば、バスの中では見つけたらどうしようとか、そういう話はしてたけど宝物が何かって話はしていなかったような気もする。

 してたっけ?

「えーと、宝物が何かよね?」

「さっきは古代のマジックアイテムがどうのって言ってたけど、どういう物なのよ」

 困った、いや別にそこまで困ってるわけじゃないけども、たぶんこれを言ったらマオは怒る。

「宝の地図と一緒に書いてあったんじゃないの? ていうか、そもそもどういうメールだったわけ?」

 実はメールには宝物については何も書いてなかった、ただ地図が添付されてて「ここに行くといいものが見つかるよ」と書いてあっただけだ。

 でもたぶんこれを言うと、マオは怒る。

「えーと、詳しくは書いてなかったけど……、たぶん箱に入ってるような……?」

 宝物って言えば宝箱に入ってるものだもんね?

「全然わからないけど、とりあえず箱をさがせばいいわけね」

「そういうことでいいと思うけど」

 なんとか、なったかな?


「あ、いたいた」

「あれ、アラナ? どこにあるかわかった?」

「あの地図が何なのかわかったよ」

「なんだった?」

「あの地図、宝の地図じゃなくて、この町に人を呼ぶための誘致戦略だったみたい」

「? どういうこと?」

 いまいち何を言っているのかわからない。


 詳しく話を聞いたところ、あの地図は結構な人の携帯端末に送られていたらしく、とりあえず人を町に呼んで魅力をわかってもらおうという意図でこの町の町長が仕掛けたものだったらしい。

「じゃあ宝物は?」

「実際にはないみたいだけど……」

「じゃあ役所に文句を言いに行きましょ、マオもどっかに怒りをぶつけたいでしょ」

「いや別にそんなことは無いけど」

「じゃあ私が文句を言いたいから行くわ、さて出発!」

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