第628話:ハウード・ブガン~警察組織~
「納得いきません」
「何がだい?」
「私たちの活動のことです」
「何が納得できないんだ、警察組織として法の下に悪を敷く、我々の活動はそういうものだろう?」
「それです! 法の下に悪を敷くっていうのです! そもそもこの世界、この街はですけども、法とかほぼないじゃないですか!」
そう、私たち警察は存在はするものの、法に照らし合わせて悪と定義された者を相手にのみ出動可能なのだが、悪を定義するはずの法がほとんどない。
つまりは殆ど、まったくと言っていいほど出動する機会がない。
「ううー暇です」
「そんなに暇なら、俺とパトロールにでも出てみるか?」
「パトロールって散歩のことですかぁ?」
「実際にやることは確かにそれだけだが、やれることはもう少しあるさ」
「やれること……?」
なんだかよくわからないが、一緒にパトロールへ出ることになった。
「事務所は空けてもいいんですか?」
「もともとここに何か連絡が来たり、仕事をしてたわけでもないだろ。必要ないんだよここ」
「はぁ、そうですか」
パトロールと称して街へ出たものの、街は平和そのもので。
「平和ですね」
「いいことじゃないか、平和で僕らの仕事がないってのは」
「あ、あれ喧嘩じゃないですか? 止めましょう」
「いいや、喧嘩を止めるのは僕らの仕事じゃあない。本人達の問題だろうし、行き過ぎることは稀だし、最悪殺人まで行っても、法で定められていないから止められないし、捕まえられない」
「そうですか……」
「というのは警察としての話だ」
「え?」
「上着、預かっててくれるかい?」
そう言って、上長は上着を脱ぐと喧嘩している二人のところまで行って「周りの迷惑になるから、個人の権利において貴様らを止める!」等のことを大きな声ではっきりと言いながら二人を動けなくなるまでぶちのめして救急車を呼ぶなりして戻ってきた。
「これは警察の仕事じゃないからね、報告書とかには書かないでくれよ?」
「え、えーとつまり?」
「僕の今の行動に関してかい?」
「そうです」
「つまりは、パトロール中に休憩をとって、個人的に目についた二人をぶちのめしただけだけ。あそこで二人が喧嘩をしているっていう通報はあったからね、法的には警察が出る幕じゃなかったけども、パトロール中の休憩となれば話は別ってところかな、こっちなら自分の正義の基準で悪を断罪できる、もちろん法で裁かれない範囲でだけど」
「じゃあなぜ警察に?」
「一応通報が集まってくるからね、事務所の端末じゃなくて個人端末に転送してるんだけど。まぁ、あとは何もしなくても結構なお金入ってくるっていうのは、やっぱり魅力だろう」
「上長、その感じ正義ってよりも悪っぽいですよ」
「え、そうかい?」
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