第623話:オランバ・イークィ~遠隔操作ロボット~

「ジャンさん、次のロボットの操作方法、遠隔操縦を導入したらどうです?」

「ダメだ」

 次期ロボットの設計会議で僕の出した提案は即答で却下された。

「なんでですか」

「遠隔操縦は危ないからだ、運用の経験はあるか?」

「無いですが……」

「ならこの話は終わりだ、他に意見のある者はいるか?」

 その後、新武装や駆動方式についての詳細が決められ、会議は終わった。



「遠隔操縦の何がダメだっていうんだよ!」

 会議の後、酒場で同僚と酒を飲みながら愚痴る。

「ジャンさんは戦争で巨大ロボットのパイロットを経験してるからね、きっと遠隔操縦のロボットが起こした事故とかも経験してるんだろうさ」

「て言ったってさ、搭乗型と遠隔操縦のどっちが危険って、やっぱ搭乗型だよなぁ」

「まぁ、それに関しては俺もそう思う。直接人が乗ってるんだ、特殊構造でどれだけ機体が壊れてもコックピットの安全は保障されてるって言っても、限界はあるだろうし」

「絶対に乗ってないほうが安全だよな」

「間違いない」

 じゃあ、何でジャンさんは危険だと即答したんだろうか。


「じゃあさ、俺たちで一つ作らねぇか?」

「遠隔操作方式のロボットをか?」

「ああ、あんまり装備とか凝らなきゃ夜中に設備こっそり使って一機作れるだろ」

「まぁ、いいけど」

 そうして、俺たちは二人で工場が休みの日、夜に忍び込んで開いている開発レーンを使ってなんとかかんとか、一機の遠隔操作ロボットをこしらえた。


「ジャンさん! 僕らのロボットと勝負しましょう!」

「あぁ?」


 勝負は受けてもらえたが、普通に負けた。

 そりゃあ、相手は歴戦のパイロットで、機体レベルも最高で、こっちは遠隔操縦素人ででっちあげ機体だ。

「まぁ、何がしたかったは大体予想がつくが、遠隔操縦型の何が悪いかって話だろ?」

 勝負が終わった後、俺ともう一人は正座で説教されていた。

「つまりは、遠隔操縦のロボットはだな、パイロットがむき出しなんだよ。どの程度の遠距離から操作するかにもよるが、目視で操作するなら近い方がいい、それはさっきのでなんとなくわかったろ」

「ええ、まぁ」

 安全な距離……って思って結構離れて操作していたらよく見えなくて、全然うまく動けなかった。

「それで搭乗型と同じようなコックピットを外に作って、操作するとする。してもこれが難しい、モニタにラグはなくても衝撃の再現にどうしてもラグができる、死角を補う肌感覚ってのも働き辛いしな」

「つまりは」

「遠隔操縦はうちではいらん、そもそもコックピットの安全を保障してるのに、わざわざ外に置く必要もないだろう。うちで提供しているのは演習なんだから、不測の事態なんてのもそうそう起こらないしな」

 そうして、説教は終わった。

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