第614話:ジャーラ・ウーラ~力のある石~
「なんだ、気になるものでもあったか?」
「宝石……、なんでこんなに安く売ってるの?」
露店を開いていると、少女が一人寄ってきた。
「そいつは、宝石じゃないからさ、ただ色のついた石だよ」
「こんなにきれいなのに?」
「綺麗なだけでは価値がない、宝石ってのはこういうのを言うんだ」
そう言って、ケースから本物の宝石、力のある石を取り出す。
「どうだい、いい石だろう?」
「色が濁っててあんまりきれいじゃないわ、私はこっちの石の方が好きよ」
「む、そうかい。確かにこれは持ってる力が弱い石だからな、すげー力のある石ってのは、こういう濁りなんて出ないぐらいに力が満ちていてとても澄んだ色をしているらしいが、俺も見たことはないな」
「この石よりきれいなの?」
「たぶんな」
「ふーん」
そう言って、少女は多少綺麗なだけの石を一つ買っていった。
さて一日露店を開いていたが、今日売れたのは少女が買っていった綺麗な石だけだ。
他にもいいものはいろいろとあるのだが、なんで売れないかな。
価値が分かる人があんまりいないからかね。
そう考えると、あの何の力もない石は価値があったのかも知れない。
石は力こそが価値だと、そう思っていたけども、そうでもないのかもしれない。
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