第548話:フォアロ・べガル~魔女集会~

 魔女集会というものがある。

 魔法という概念が一般化しているこの世界であっても密教的に闇に潜む魔女というのは沢山いて、度々こうして集会を開いて情報交換のようなことをするわけだ。

 魔女集会の情報は秘匿され、奥深い森の中に作られた祭壇を囲んで行われる。

 とは言っても、密教的な魔女のイメージにありがちな陰鬱なものではない。

 言ってしまえば、単なるお互いの近況報告であり、長期間引きこもりがちな魔女達が外に出る機会の提供でもある。

 話題に上がるのはどこどこ世界の悪魔が最近この世界に来たとか、生贄にはどこの肉を使うのがいいとか、どこの森に何の卵が落ちているとかそういう話が主だ。


 そういえば最近はもう一つ、従者自慢が話題になることが多い。



「うちの子はねぇ、とってもかわいくてねぇ、こないだなんてこんなかわいい寝顔」

 ああ、あの魔女はやたらと自分のところの子はかわいいと推してくる。

 かわいいとは言っているが、そう、隣に立って顔を赤くしているいかつい大男だ。

 昔、50年ほど前に拾った卵から出てきたあの子を連れてきたりはしていたが、まぁ確かにその時は可愛かった。

 今ではあの通り見事に成長しているのだが、彼女の目には当時のままのように映っているらしい。

 半ばボケ気味なんだろうよ。

 周りもわかってはいるが、馬鹿にすると怒って呪いをばら撒きかねないからね、だれも可愛いということを否定したりはしないのさ。

 なんだかんだで、みんな気持ちがわからんでもないんだろう。

 どいつもこいつも従者はチビの頃に拾ったかしてるからね、昔は可愛かったというのを引きずっている奴もおおいのさ。


「ではマスター、僕はどうですか?」

「ん、あーそうさな。お前は昔と変わらず無愛想で可愛げもなくてあまり他人に誇れることがないね」

「そうは言ってもわざわざ連れてきたということは自慢する意図がおありなんでしょう?」

「生意気してると煮込んで捨てるよ」

「それ16年前に僕を拾ってからずっと言ってるじゃないですか」

「あーもう、次からは連れてこないからね!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る