第525話:ブロー・タタグ~慰霊の火~

 夜、広野を二分する道路を走っていると、小さな灯りがポツポツと空へ上っていくのが見えた。

 なんだろうかと、気になり僕は上っていく灯りが現れる場所に向かうことにした。

 そこは存外近く、すぐに辿り着いた。

 数人の人が集まって、風船を燃焼式の簡易証明装置の熱を用いて飛ばしていたのだ。

 飛ばしている人の顔は明るくない。明度的な意味でなく。

「何をしているのですか?」

 近くにいた人に尋ねてみる。

「これは葬式なのです、私たちの世界のね。空の向こうにあると言う死後の世界への旅路を迷わないようにと、まっすぐに空へと上る、明るく光る風船を飛ばすのですよ」

 ああ、宗教儀式の一種か。

 しかしこれは……

「言いたいことはわかります」

 話を聞いて少し考えるそぶりを見せただけで察されたようだ。

 もしかしたら似たような疑問を彼らのなかでも論じたことがあったのかもしれない。

「そもそもこの世界こそが死後の世界。この世界で死んだとして、次の世界があるとは思えない、ならばこんな儀式を続ける意味はないんじゃないか、でしょう」

「ああ、そうだ。そういう風習、習わしだからと言えばそれまでの話だが、そこまで自分達で自覚していながらどうして続けているんだ?」

「なぜですかね、それがわからないから続けている、という感じですかね」

 一通り話を聞いて少し考えることはあったが、端から見ていればこの儀式は意味なんてなかったとしても、とても綺麗な景色を生み出すということに関しては価値があるんじゃないかと思った。

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