第515話:モルコム・カプルタムⅢ~調べ物は図書館で~

 魔法の研究を進めていくにあたってふと気になったことがある。

 魔法とはどうやって発見発明されたのだろうか。

 元々魔法というものの存在しない世界の生まれとしてはこういった特殊な現象を発声させる技術というのに馴染みがない。

 一応科学技術として存在していたが大がかりな設備を要したりとぽんと思いついて発見実装されるものではないように思える。

 こういうのは考えても仕方ないことだし、詳しい人に聞きに行った方がいいかもしれない。


「魔法はどこから湧いてきたかって?」

「出来れば詳細に、多種多様なデータを提供してくれると助かる」

「なるほど。ちょっと待ってろ、流石に口頭で説明するよりも資料を集めてきた方がいいだろう」

 ここは万世の図書館、あらゆる世界の書物の記憶から作られたコピーが並んでいるという話だ、調べ物をするならここが一番良いだろう。

 彼はそこで司書のまねごとをしている常連客だ。

 見たことはないがここの管理者はドラゴンらしく、人の管理者は存在しないらしい。

 利用者は自由に閲覧してよいという雑なシステムになっている。

 そういえばここにも魔法がかかっているのだよな。

 記憶から本を作る魔法や音を消す魔法。

 管理者のドラゴン由来だと聞いたことはあるが、ドラゴンはどういう仕組みでそういった現象を発声させているのだろうか。

 ううむ、わからん。


「はいよ、お待たせ」

 司書の彼は両手に大量の本を抱えて戻ってきた。

「これを電子データ化とかできないのか?」

「気持ちはわかるが無理だぜ、ここの本はスキャナーを通らん。竜の力って奴らしいが、よくわかんねーな」

「魔法というのは便利なのか不便なのかわからんな……」

「まぁ、魔法にもいろいろあるからなぁ、また知りたいことがあれば来るといい」

「ああ、ありがとう」


 図書館へ行ってみてわかったが、生物由来の魔法というのもあるのか。

 きっと不可解な現象を発生させる生物を捕えて解剖し、魔法を発生させる器官を摘出したりしたのだろう。

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