第476話:ルイト・ルイス~死んだことを認める覚悟はあるか~

「僕が死んだですって? またまたそんなご冗談を」

「いえ、死にましたよ。ここは死後の世界です」

 ここはターミナルの一角、死んだことを認められない人に対して現状を納得してもらうための面談室だ。

 机と椅子が一対、あとは説明用のモニタスフィアがあるだけだ。

「死後の世界というならば、どうして人の建造物があるんですか。知らないんですか?死後の世界には何もないんですよ」

「そうですね、確かにあなたの世界の死後観はそうなのですが、この世界は例外でして、本来の死後とは別に用意された世界なのですよ」

 こういう人は結構多い、世界それぞれに異なった死後観があり、この世界は死後観と異なっている為、死後だと認識できないことがあるのだ。

「そんな馬鹿なことがあるか、死後の世界は一つだけだろう」

「それはどうかはわかりませんが、少なくともここは元々あなたの世界とは違う世界になってまして、少なくともあなたの元居た世界には二度と帰ることはできません。それだけでも認識納得していただいて、この世界での生活してほしいんです」

 死後だとかは関係なく、元の世界へ戻ることは不可能なのだ、帰りたいと言われても困るから、これだけは納得してもらわないと困る。

「俺は拉致されてきたのか」

「違いますけど、比較的正確性が高い言い方をするのであれば、迷い込んできたという感じですね。誰かに連れてこられたわけじゃなくて、自分から迷い込んできたという方が正しいですね」

 誰かが拘束して連れてくるわけじゃないし、誤解されても困る。

 死んだことを認めない相手には説明が難しい。

「体も小さくなってしまっているので、生活には不便があるかとも思いますが、暫くすれば慣れますよ」

「そうだ、そう、これがわからない、体がなぜ小さくなっているんだ。変な薬の実験台にでもしたのか?だから元の世界に帰せないのだろう?」

「まぁ、そういう認識でもいいですけど、とにかく、あなたは元の生活には戻れず、この世界で暮らしてもらうことになったということにさえ納得していただければこの世界での生活についての説明に移れるのですが」

 話が分からない人に説明するのは大変だ、ある程度はマニュアル化されているが世界単位でも個人単位でも認識に差はあるからなかなか難しい。

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