第472話:コレオ=ユリオ~時間停止能力~
止まれ。
そう心の中で呟くと僕以外の全てが動きを止めた。
僕は時間を止める能力を持っている、実際は止めるというよりも時の流れから降りるという感じだが、まぁやれることは概ね同じだからその差はどうでもいい。
僕は時間を止める能力を持っているということが重要なのだ。
時間を止める能力というのはとても便利そうなイメージを持たれることが多い。
まぁ、とても便利なのだが極端に便利なわけではない。
できることは増えるのだが、その分できないことが大きくなって煩わしさが増えるのだ。
時間が止まって空気にひっかかって動けないということはないが、多少の動きづらさはある。
別に時間が止まっているのだから動きにくさは大した問題じゃない。
止められる時間に制限はないし、時間がかかっても実際は一瞬で移動できるようなものだ。
差し引きで便利なのだが、あいにくそんなに急いでどこかへ行くということがないので、特に移動に使ったりはしていない。
普段からそういう動きの無い世界をうろついているからかもしれないが、普通に動いている人の流れに身を任せるというのも結構好きなんだ。
移動に使わないなら何に使っているのか、時間停止と聞いて悪用することを考える人も結構いるのだが、僕は善性の人間だしこの能力では物を盗むことに意味がない。
先程、僕の能力は時の流れから降りると表現したが、当然のように僕が降りている間も時間は流れ続けているのだ。
僕が時間から降りている間に干渉した物は元の時間に戻ると干渉していない状況と何ら変わらない。
例外はあるが盗った物は元の場所に戻り、満腹になるまで食べても戻れば空腹、何かを記録することもできないと、まぁこれは不便。
考えれば悪用の道もあるのだろうが、僕の悪性はそれを考えるほど強くはない。
実用的な時間停止の使い道は本を読んだり長考したりするぐらいなのだが、思いついたことをうっかり止めたまま記録しようものなら戻った瞬間消失する。
いちいち時間に戻るのも手間で不便なのだ。
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