第456話:ラムファ・カル~街並み保護~

 意味が解らん。

 今日受けた仕事の内容は、「この街らしさを失わせず、統一感を持った街並みを作ってくれ」とのこと。

 もう一度指定された「この街」とやらを見る。

 様々な世界の様々な建築法が無計画無秩序に配置されているように見えるこれがこの街らしさ、だろうか。

 この街らしさというか混沌を再認識したところでもう一度依頼文を読み返す。

「この街らしさを失わせず、統一感を持った街並みを作ってくれ」

 統一感という言葉の意味をちょっと調べ直さなければならないかもしれない。

 不毛な調べ直しは一旦置いておいて、依頼主に連絡を入れる。

「今回の依頼ですが、断らせてもらいます」

「ええぇ!何故です?打ち合わせの時はあんなに乗り気だったじゃないですか!?」

 そうだろうか、基本的に一人で現地を下調べするまでは適当に打ち合わせするし、その内容も依頼内容を受け取って「じゃあ具体的な話は下調べをした後で」ぐらいしか話していなかったような気もする。文化の違いかな?

 即下調べの話をされたら相手は乗り気、みたいなのがあるのかもしれない。

「別に乗り気じゃなかったですけど、ていうかこの依頼なんですか、下調べに出てきてびっくりしましたけど。この街らしさを残したまま統一感がある街にするのは無理です」

「ええぇ、あなたならできると思っての依頼なんですが、本当にできませんか?もう一度だけ考えてもらってはくれませんか?」

「もう少しだけですよ……」

 とりあえず、考える。

 無理だというのはもう少し後からでもいい、かもしれない。


 いーやこれ無理だわ。

 そもそも、この街の住人の出身も千差万別、調べれば調べる程混沌極める街だ。

 その街で統一感を出したい等と、どうしたらそんな世迷い事を言えるのだろう。

「こんな仕事むりでーす」

「えちょっまっ」プツと電話を切る。

 いやーこんな無理な仕事は初めてだった。

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