第438話:トーロン・メアラ~クッキー作るよ!~
目の前には山、山の様な小麦粉の山。その隣には同じ高さの砂糖の山。
あと卵、何の卵かいまいちわからないけどひたすら大量にある。
「バターは?」
「それ」
聞くと左にあるやや黄色がかった白い壁を指された。
これ、バターか。
「で、クッキー作るんだよね?」
「ええ、だから材料はきっちり揃えたわ。さぁ作り方を教えなさい!」
多すぎる、多すぎるがそんなことも言えずしかたなく始めることにする。
「とりあえず、最初は練習で少しずつ作ろうか」
しかたない、この量の材料とか一気に使える物じゃない。
砂糖の山とバターの壁から適当な量掬い取ってきてボールに入れる。
「これをこうやって、混ぜて」
「混ぜる機械は使わないの?」
「できるだけ手作りがいいって言うから、ヘラしか用意してないけど」
「ああ、そうね。手作りだものね。機械を使うのは無粋ね?」
しかし、この量を手作りで消費するつもりだっとのかと、彼女の正気を疑う。
「それで、次はどうするの?」
「ん、ああ。卵も入れてさらに混ぜる。んで、ひとしきり混ぜたら小麦粉も入れて混ぜる」
卵と小麦粉を適量、追加する。
「さて、しばらく冷蔵庫に入れて休憩だ」
「結構クッキー作るのって疲れるのね」
「まぁな」
「それにしても、この部屋臭くない?」
「お菓子っていうのは作ってるときはそこそこ臭うもんなんだ、焼けばいい匂いになるさ。大体なんだってそうだろう?肉や魚とかもさ」
臭うのはあのバターの壁のせいだが、言えるもんじゃない。
「臭うなら一旦外にでも出るか、気持ち悪くなっちゃうからな」
「そうね」
「あ、いや先に俺はオーブンの用意だけするから、先に出ておいてくれ」
「あらそう?悪いわね」
彼女は調理室から出ていき、俺だけが残った。
「はぁー、うっ、げほっ、げほっ」
一人になって大きくため息をつこうとしたのだが、バターの臭いにむせてせき込む。
「あー、くっそ。さっさとオーブンだけ温める設定して外出るか」
こんな部屋に長居したら死ぬ。
オーブンの設定をいじり、だいたい1時間後ぐらいに温まって型抜きしたらすぐ焼けるように設定する。
設定を終えた俺は、さっさと部屋を出て彼女の元へ行き、適当な話題で時間を潰していると、爆発音が聞こえた。
「調理室の方では?」
「何かあったか?」
急ぎ足で調理室へ向かうと、なんだかいい匂いがしてきた。
結果から言えば、調理室は爆発しており、大量の卵焼きが残されていた。
意味が解らないが、どうやらせき込んだ時に小麦粉が空中に飛散し、それがオーブンが点いた拍子に爆発したらしい。
大量の卵焼きは積まれていた卵が爆発でいい感じに火が通った結果で、バターも溶けていい感じに味付けもされていた。
「これ、殻が邪魔だけどおいしいわね」
「クッキーは失敗しましたけど、いいんですかこれで」
「いいのよ、だって卵焼きは美味しいんだもの」
「はぁ、」
あの大量の材料をどうするかを考えなくて済んだが、調理室毎片付けることになってしまったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます