第436話:シャリア~殺される少女~

 あ、殺さなくちゃ。

 通りの向こうに見えるあの人は殺さなくてはいけない。

 アレは殺すべき人だ。

 今の時間は人通りが多い、殺すなら夜。赤い夜が訪れてから。

 今日のところは、こっそりとマーカーを取り付けるだけにしておこう。


 赤い夜が来た。

「こんばんは、いい夜ですね」

「あなた、どなたですか?」

「私はシャリア、あなたを殺しに来ました」

「ああ、僕を殺しに来た人ですか。なるほど、なるほ」

 話している途中だが、首が落ちた。

 死を自覚して受け入れてくれる人はやりやすくていい。

「また人を殺したんですか?」

「えーっと……アリン君だっけ?ついてきてたんだ」

「偶然ですよ。ちなみに僕はアインです」

「ああそう、アイン君だっけね。で、どうするの?まだ殺してほしい?」

「ええ、殺してもらいたいんですが。どうせ殺してくれないんでしょう?」

「まぁ、ね。君はまだ殺されるべきじゃないよ」

「その殺されるべきってのはどうやって決めているんだい?」

「わからないよ、ただ殺すべきってことがわかるだけ。今殺したこの人もそう、彼は自分が死ぬってことを理解してたみたいだけど」

 たまにそういう人がいるけど、よくわかんないんだよね。

「ふぅん、そうだなぁ。じゃあ殺された人のことを調べてみたらどういうルールかもわかるかもしれないね?」

「どういうこと?」

「殺される人のルールがわかりさえすれば僕がそうなれるかもしれないじゃないか。殺す人と偶然出会うのを待つよりも効率的かもしれないよ」

「えー、そうかなぁ。別に私は殺したいわけじゃないからなぁ。殺さなきゃいけないから殺すだけ」

「ダメかぁ、まぁ殺さなくてもいいから僕と仲良くしてくれよ」

「別にそれはいいけど、たぶん殺さないよ?」

「そのうち気が変わるかもしれないだろ?」

「じゃあ、君は私を殺せる?」

「殺せないよ」

「じゃあ私も君は殺せない、そういうことだと思って殺されるのは諦めてよ。またね」

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