第435話:カベレ・ライン~選挙~

「投票はお手持ちの端末からでも行えますので、あまり押さないでください」

 今日は投票日だ。

 ターミナルの内の一つのホールが解放され投票所になっている。

 わざわざここに来なくても携帯端末デバイスから投票できるのだが、使い方がわからない人がこうして集まってくる。

 他の地区がどうかは知らないが、この地区にはそういう人が多いらしく、とんでもなく混雑している。

 そこで俺は、列整理やらなんやらの雑用をしているわけだが。

「だからですね、投票は自分の意思で行ってもらわないと困るんですって」

「そんなこと言わずによぉ、おすすめの奴教えてくれよなぁ」

 投票の意義を理解できていない、本当に困る。

「特に入れる先を思いつかないのであれば無投票でもよいので」

「そうなのかい?でも折角だから入れていきたいねぇ」

「いやだからですね?」

 ああ、本当に困る。


「大分落ち着いてきたな」

 投票者ラッシュが過ぎて、ホールの中の人もまばらになってきた。

「今回の投票もなかなか波乱でしたねぇ」

「そもそも選挙に興味がない人が多くて困ります」

「いやぁ、仕方ないんじゃないですか?ていうかなんで全住民を対象に選挙してるのか意味わからないですよね。誰になったところで生活が変わるわけでもないですし」

「いやまったく、選挙をこれ以降せず会議で代表者を選出するって公約の人がいたら投票したいぐらいですよ」

「いやぁ、それはそれで問題があるんじゃないですか?」

「ですかねぇ。まぁ当選したところで大した権力も与えられないんですから、誰が当選しても同じでしょうね」

「いやまったく、せめて携帯端末デバイスだけでの投票システムに変えてもらえませんかね。通常業務が滞るんですよねこれやってると」

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