第422話:シルフォス+タダナル〜死を見る目〜

 僕はこの世界で生きるのには向いていない。

 僕の目は、「見た対象が経験した死」を見ることができる。

 死者が蔓延る世界で生きてきた僕は、この目に幾度となく助けられたが、この世界では非常に不便な物だ。

 なんせ、全員が全員死を経験している世界だ。

 外へ出れば目につく全員の死が飛び込んできて吐きそうになる。

 死のうかとも考えたが、万が一この先の世界が存在した場合、今よりも悲惨なことになるのは目に見えている。

 僕は、死ぬことに怯え、生き続けることに怯えなければならなくなったんだ。

 不幸中の幸いと言っていいのか、この世界では1人でも生きていくことができた。

 ここしばらくは一歩も家から出ていない。

 しかしだ、1人でも生きていくことができるのと、1人に耐えられるというのはまた違う話になってくる。

 有り体に言ってしまえば、寂しいのだ。

 しかし、外に出れば死を見る。

 もう他人の死なんて見たくない。


 悩みに悩み抜いた僕は、自分の目を潰すことにした。

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