第410話:リコリコ☆ラリコ~魔法VS格闘~
『さぁーて!次の試合はぁ!これは珍しい、この闘技場になんと魔法使いの少女が挑みに来たぞ!データによれば格闘は苦手とのこと!どーしてこんなところに迷い込んだのか!リコリコ☆ラリコ!対!素手なら最強!不器用すぎて武器は持てない!あんまり痛くしてやるなよ!マニアム・ローラス!』
闘技場が歓声に包まれる。
私の初戦を祝福するかのように、場が盛り上がる。
私はかわいいフリフリの舞踏着を身に纏い、シンプルな短いステッキをくるくると回しながら入場する。
私の恰好が場違いなぐらい、闘技場は砂っぽく岩だらけで、全体的に黄色っぽい。
そこに私の赤を基調とした衣装は良く映える。
対戦相手は筋骨隆々な、どの角度で見てもかわいくない上裸の男、武器は持っていないが、さっきの前説によれば不器用で使えないかららしい。
そう言う意味では可愛いと言えるかもしれない。
お互いに開始位置まで歩いて近づき、本来ならお互いの武器が届かない距離で向き合う。
対戦相手のマニアム、という人はたぶん油断している。
油断、というか私の姿を見てどうしたらいいのかわからなさそうにしている。
可愛さで油断させる作戦、まさか効くとは。
さて、試合開始まであと少し、だめ押しで笑顔で手を振ってやろう。
マニアムにも、観客にも。
マニアムは笑いなれていないようににやつき、観客の声援は大きくなる。
『5』
開始までのカウントが始まる。
『4』
ステッキのギミックに手をかける。
『3』
カチャン、カチャン、カチャンとステッキを伸ばし、
『2』
二段目を折り曲げしっかり固定する。
『1』
最後に、フリフリ多めの右の袖から弾倉を取り出し、変形したステッキにはめ込む。
『始め!』
完成した魔法の銃を合図と同時にマニアムに向かって放つ。
『おおーっと!リコリコ☆ラリコ!突然銃火器を持ち出したぁ!?』
実況も観客も動揺し、大きくどよめきが生まれる。
「これは魔法です!」
『なるほど!魔法ならばオッケーです!』
実際これは魔法!知り合いの魔機構技師に頼んで作ってもらった改造魔法のステッキ。
あんまりにも使い勝手が悪い魔法を純粋なエネルギーとして弾倉が吸収、定型化された魔法の弾を生成してそれをステッキによって加速射出するというシステム!
安定性を重視したために見た目が殆ど銃器になってしまうのはちょっと残念だけど!これは!魔法少女としての戦い方!
ちなみになぜかこの闘技場、ルールとして銃火器の使用は禁止されているが魔法弾の銃ならオッケーという謎のルールがある。
よくわからないが、オッケーなら使わせてもらうしかない。
狙いが甘く、マニアム周辺を撃ちまくって砂ぼこりが上がってしまい、マニアムが見えなくなる。
構わず撃ちまくっていれば当たるだろうと、撃ちまくる。
が、当たっている音がしない、当たれば死なない物の、結構な痛みがある為、悲鳴の一つや二つ聞こえてきてもいい物なのだけど……
と思ったところで弾倉一本目が尽き、連射が止まる。
「やっと、尽きたかお嬢ちゃん」
砂煙の中から、マニアムの声がする。
揺らめく煙が、一瞬で大きく乱れ弾幕が切れた隙にマニアムが飛び出してくる。
ステッキにセットされている弾倉は空、絶体絶命を演出するには十分な状況で、私は笑う。
距離を詰められる直前に、私はスカートを払って、中に止めてあった物を落とす。
それは、強大な魔法のエネルギーを溜めた爆弾。マニアムに向かって蹴り飛ばして爆発させるが、派手なエフェクトにひるんでいるがダメージになっている様子はない。
そう、見た目だけのコケ脅しだ。
こんな近くで爆発させたら私も巻き込まれちゃうし。
その隙に左の袖から次の弾倉を取りだしてステッキにセットし、今度はしっかりと狙って放つ。
それをマニアムは弾いた、それも素手で。
『おおっとー!マニアム魔法弾をものともしない!流石!素手最強!』
素手最強ってそういうこと!?と驚きながらもこのままでは打つ手がない。
撃って足止めしながら距離を取り、使い勝手が悪すぎる本来の魔法の詠唱をする。
大丈夫、いける、あとはタイミングを見計らって……
慌てながらでだいぶ省略した詠唱を無理やり綴じて発動させた魔法は、大爆発を起こした。
さっきの爆弾とはちがい、破壊力を持って。
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