第409話:イロハリ・ロイラン~破壊の祭事~

 年に一度の祭りの日だ。

 破壊の祭り。

 今日は破壊を尊び、形あるものに感謝するという趣旨の祭りだ。

 簡単に言ってしまえば、壊してもいいものをみんなで気持ちよくぶっ壊して、普段使っている物を大事にしようという、ストレス解消を形式化したものだ。

 さて、今日みんなでぶっ壊すオブジェが運ばれてきた。

 今回のオブジェは、前の世界での独裁者、まだ死んでいない奴を模している。

 最近転生してきたやつが持ち込んだ情報からそうとうヘイトが溜まっているようだ。

 運ばれてきただけでとんでもない罵詈雑言が鳴り響く、普段なら嫌厭されるような単語が飛び交っている。

 しかし誰もそれを咎めない、今日はそういう日だからだ。

 街の要所要所に同じオブジェが立てられる。

 開始の時間はまだだ、街の人はそれぞれ破壊工具を手にし、今か今かと開始の時間を待っている。

 開始の時間まであと1時間もあるというのに、既に全員が臨戦態勢、誰かがフライングした、開始の時間を待たずして飛び出した。

 それに他の奴らも続く、もう待ちきれない、開始の時刻は前倒しだ!

 全員が、俺も鈍器を持って飛び出した。

 もう、誰も意味のある言葉を放っていない。

 雄叫び、悲鳴、呪詛、ありとあらゆる破壊を独裁者のオブジェに向けて叩き込む。

 それが、砕けて石ころになっても、かつてその形をしていたというだけでさらなる破壊を叩き込まれる。

 最終的に、粉になるまで叩き壊され、風に乗って消えたところで興奮は収まった。


 そして、次の破壊対象のオブジェが運ばれてきて、再び熱狂の渦が巻き起こった。

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