第406話:エクリア・ウリア~流行りの歌~

「~♪」

 歌が聞こえる。

 神秘性の欠片もない、サイケデリックな電子音の組み合わせで作られた、けばけばしい歌。

 今この街で流行っている歌だ。

 僕はあまり好んでは聴かないが、流行りの歌と言うのは、聞こうとしなくても自然と耳に入ってくるものだ。

 内容は、愛とか、勇気とか、生きていることへの感謝だのがつらつらとよくそこまで耳障りのいい言葉を並べられるものだと感心する。

「~♪」

 あの歌は、前の世界での人気だったアイドルの歌だ。

 最近、本人が転生してきてニュースになったのを見た。

 喜ぶ人もいるなか、なぜか彼女の死を悼む者もいたと聞く。

 それはなにかおかしくないか?と思ったのが強く印象として残っている。

「~♪」

 この歌は今では色々な街で聞かれているらしい、共通語に翻訳されたカバー曲もあり、先日はカバーしたアイドルと本家のデュエットライブもあったらしい。ポスターが貼られているのを見たし、地元から有名人が出たと各地にある前世を同じくする街でも大々的に祝ったらしい。

 地元と言っても惑星規模で遠い存在のはずだが、多数の世界が混ざるこの世界では世界単位で同じなら同郷と主張できるのだ。

 まぁ、僕はその曲を好んでは聴かないのだが。

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