第372話:カカイロ~未確認浮遊物体~

「なに?上空に未確認浮遊物体?」

 朝から妙な報告が飛び込んできた。

「はい、何時からか上空に出現しており、観測班の報告によれば人工物のようだと」

「ふん、人工物か。誰かの悪戯じゃないのか?」

「いえ、非常に高い位置で静止しており、誰にも見つからずに配置するのは不可能だと思われます、詳細はこちらの書類に纏めてあるので目を通しておいてください」

「ああ、わかった」

 差し出された一枚の紙を受け取った。

 渡した部下は他にも仕事が立て込んでいるらしく、さっさと部屋を出て行った。


 さて、渡された書類に目を通す。

 紙の半分を件の未確認浮遊物体の写真、なるほど、これは確かに人工物らしい。

 岩の塊がたまに空に浮かぶことはあるが、それとは記されている高度も見た目も全く異なる。

 この高度まで上がることは滅多にないし、こんなつるりとした材質の岩は無い。

 恐らく、異文化圏の飛空艇か何か。敵国の観測艇か何かだろうか。

 前回の観測の時には存在しなかったことを考えると、ここ2回期の間に現れたことになる。

 大きさは、個人艇の大きさではない。

 少なくとも乗員は5人と言ったところか。

 まぁ、いいこれ以上の分析は必要ない、撃墜指令でも出すことにしよう。


「報告です、未確認浮遊物体は撃墜できず」

「なんだと?」

 最初に報告に来た部下とは違う部下が報告に来た。仕事が少ないのか口頭で説明を始める。

「第四特砲により1射、観測によれば命中、しかし効果は認められず。続く同砲による2射3射も同様に効果を認められず」

 そのような超越科学を持つ国が近隣にあっただろうか。

「……何か反応は?」

 人が乗っていれば間違いなく反応があるはずだ。

「追加報告です」

 もう一人の部下も報告に来た。

「浮遊物体より通信、未知の形式のため確認できず。詳細はこちらに」

 そうして紙束を置いて出て行った。

「即刻、この通信の解読をさせろ、形式がわからない以上どうしようもないが、一応暗号化無しで警告文を送れ、文面の報告確認は不要、担当者の裁量に任せろ。さっさと行け」

「了解!」

 面倒なことになりそうだ。

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