第370話:シガ・モケ~どこでも行けるどこまででも行ける~
目が覚めると世界が変わっていた。
というか、死んだ結果違う世界に来ていた。
この世界に来て最初に驚いたことは、他人がいること。
あの世界には僕一人しかいなかったし、他人という存在がとても新鮮に感じる。
そして一番驚いたことは、壁がないこと。
いや、建物には壁があるけど、世界の端を表す壁にどこまで行っても当たらないということ。
この世界はとても広い。
僕が今までいた世界の何倍、いや何十、何百、それこそ表現できる限界の数値倍しても足りないぐらい広い。
この世界は、まさに無限で表すにふさわしい世界だった。
僕は旅に出ることにした。
いままでは狭い世界を狭いとも思わず、畑を耕して動物を育てながらどこにも行かず、どこにも行けず暮らしていた。
そんな僕がこんな世界に放り出されたら旅に出るのは至極当然の流れだろう。
リュックサックにいっぱいの荷物を詰めて、歩いて旅に出た。
旅に出てみて新しくこの世界にわかったことは、見えない壁の存在についてだ。
あの世界にはところどころに見えない壁があった。
実際壁を認識していたわけじゃないけど、通れない場所があったのは確かな話だ。
例えば崖の上、唯一行けた崖の上は手すりの向こうに手も伸ばせなかった。
アイテムらしきものが見えていたのに、手が延ばせず、入手できない背景オブジェクトだったことにがっかりして帰った記憶がある。
この世界では、見える物はちゃんと存在しているし、壁も登れる降りられる。
道具さえ用意すれば空も飛べる。
穴も掘れるし、好きな場所を耕せる。
自由すぎて何が自由なのかもわからなくなるな、と思いながら今日もどこかへ向かって歩き続ける。
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