第307話:シェニー+シッツ〜星の詩〜
夜の空に輝く星々。
僕は知っている、あの星は空の向こうの大地にすむ人たちの営みの火だと言うことを。
誰も知らない、空の向こうの大地に根付く彼らの顔を。
ある世界では死ぬことを星になると言う。
空の向こうは死の世界のさらに先。
星の大地にたどり着くには死ぬのと同じ、そう謳われる。
夜空の星は彼らの営みの火。
死して尚、地上に届く明かりを灯す。
飲み屋の一角を借りて楽器を鳴らし詩を唄う。
これは僕の趣味だ。
僕の詩は人気があって結構な収入にもなる。
お金自体にはあまり意味はないが、僕の唄う声に価値があるとされただけでも嬉しい。
今日の詩は星の詩。
一年前ぐらいに空の向こうの大地を目指して旅立った冒険家がいて、それ以降人気が上がった詩だ。
この詩では空の向こうは死者の国と歌っているのだが、縁起が悪い気がしないでもない。
しかし、空の向こうの国がテーマであるというだけで人気になった。
もしかしたら案外人々は詩の内容なんてどうでもいいのかもしれない。
歌声を評価されるのは嬉しいけど、内容も聞いてほしい。
逆に内容はどうでも良いならもっとひどい詩を唄ってもいいのかもしれない。
そういえば、彗星の詩もけっこう人気なんだよね。
あれは仕事として請われて唄うことが多いから表現には多少気を使っているとはいえ、解説を求められると少し困るタイプの、表現で内容をうまいこと飾り立てて耳障りをよくしているだけの詩だよな。
他に人気が高い詩もけっこう適当に書いてたり、内容が気まぐれに思ったことを綴っただけだったりと自信作とは言い切れないものばかりだ。
逆に本気で作った詩はあまり人気がでない。
数千年の人生観で書く詩は命の短いヒト達にはどうにも理解できないのかもしれない。
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