第305話:シース^ペクチャ~水没都市〜
目が覚めると、海の底だった。
いや、違う。
海の底であり、自室だ。
不思議なことに呼吸はできるし、部屋の電化製品の類いも壊れている様子はない。
ただ水中であり、歩くのに支障が出る。
泳げばいいのだけど、普段と勝手が違って困る。
いったいどうなっているのかと、外に出る。
当然水没しているのは私の部屋だけでなく、街全部が沈んでいる。
一晩のうちに何があったと言うのだろう。
他にも何が起きたのか理解できていないヒトが多くてちょっとしたパニックになっている。
私としては特に問題もないし、泳ぐのは楽しいしで慣れた今となってはなにも困ることはない。
ずっとこのままでもいいぐらいだ。
そうだ。
しばらく沈んだビルの合間を気持ちよく泳いでいて思い付いた。
水面の方はどうなっているのだろう。
行ってみようかな?ちょっと遠いかな?と考えているとビィーンと音をたてて高速で移動する、バイクのような乗り物に乗ったヒトを見かけた。
あんな乗り物があるのか、なら色々と移動するのも楽そうだ。
ちょちょいと
少し遊ぶだけと考えると値が張ったけど、いつまで水中なのかもわからないしこんなものだろう。
ビィーンという音を立てて水面を目指す。
日の光が水面で散ってキラキラしてて、すごく綺麗だ。
そんな時も少し、ザパーンと水面を突き破って空気中に飛び出した。
ふと、体が水中での生活に適応してたとしたら空気中にいきなり飛び出して大丈夫かな?と思いもしたがなんの問題もなく、日の光が体を暖める。
そういえば起きたときから今までずっと水中にいて気づかなかったけど、思い返してみれば水中はひんやりしてた。
夏季も近くなっている最近はだんだんと暑くなってきていたから街毎沈没したのは涼しくてよかったのかもしれない。
そのまま水面を走り、陸地を目指す。
日の光で体に熱がこもってきたら潜って冷やして、また水上で暖まってを繰り返しながらの移動だ。
そうしてたどり着いた陸地から見た街はなかなかおもしろい、そもそも普段はこんな高いところまできて眺めないし、これからはたまにこういう場所にきてもいいかもしれない。
しばらく景色を堪能したあと、結局どうして街が海に沈んだのかが気になって、知ってそうなヒトがいるところ、役所に向かった。
私と同じようなことを考えて役所に向かったヒトは多かったらしく、役所回りには結構なヒトが集まっていた。
水中なので、立体的なヒト混みになっている。
水没の原因よりもこの景色の方が面白い。
結局そのあとしばらくふよふようろうろしながら待って話を聞いたら、この辺りは何百年かに一度ぐらいにこうやって沈むらしい。
土地が回りよりも低くなって水がたまりやすい地形になっているのだという。
そのせいか、たまーに海が転生してきてた街が沈むので、一帯に水中でも生存可能になる魔法による保護を行っているらしい。
そういえばこの街に住むことになったときに説明を聞いたような聞いてないようなという感じだが、水はこの先1年ずっとこのままでそのあとは別の海に魔法を使って飛ばしてしまうらしい。
1年かぁ、結構長いなぁ。
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