第304話:シャリア~殺す少女~

「あれ、また会ったね。えーと名前は、なんだっけ?」

 以前少し話をしただけの彼だ、そういえば名前を聞いていなかったと思う。

「君は……、驚いた普通に女の子らしいこともするんだ」

 公園のベンチに座ってクレープを食べる私を見て、名乗らずに失礼なことを言う。

「当然でしょ、女の子なんだから」

「いや、だって最初に会ったときがあれだったから」

 ああ仕方ない、そういえばそうだ。

 あのときの私はそういうものだった。

 彼がそう感じるのも仕方のないことだった。

「あれ以外は普通の女の子なんです、いつもはああじゃないんです」

「ああなるのは、どれぐらいの頻度で?」

 そこを気にするか彼はそういえばそういう感じのヒトだったように思える。

 前回は少し言葉を交わしただけだったけど、彼は見た目以上に強いインパクトを残していった。

 おそらく、彼が私に感じたそれよりも大きなインパクトだ。

「だいたい赤い夜の日」

 いつああいうことをするのか、思い返してみれば全部そういう日だ。

 前の世界でも、この世界でもそうだ。

 頻度が増えたと思ったらそういうことだったのだろうか。

 思いがけず解けた謎は置いておいて、彼との会話を続けよう。

 インパクトが強かったというのは悪いことじゃない、どちらかといえば彼に興味がある。

「次は私の質問に答えてくれる?」

「いいよ、でも先に隣に座ってもいいかな?」

 そういえば彼は立ったままで、私は座っていた。

「別に立っててなんて言った覚えはないけど、2つね」

 彼からの質問はこれで2つだ。別にきっちり同じ数の質問を投げ合いたいわけじゃないけど。

 言ってみただけだ。彼が流せばそれでいい。

「で、何を聞きたいんだい?」

「さっきも聞いたけど、あなたの名前は?さっき答えてくれなかったでしょ」

「ああ、名前か。僕の名前はアイン=カリン。区切りは2本線ね」

 アイン=カリン、よし覚えた。

「じゃあ次は僕の番」

 さっき私が言った、2つの意味は無視して質問をしようとしてくる。

「なんで僕は殺さなくてもいいんだい?」

 ああ、そういえばそんなことも言ったような。

「殺す理由がないから、かな。殺さない理由はそれで十分」


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