第300話:ピリア・ゴラス~自動人形技師~
困った。
全くもって困ったことになった。
死んでしまい、この世界で生まれ直したまではよかった。
しかし、あの子らを置いて来てしまったのだ。
あの世界はいまごろ大異変により動物が全て消滅して、動くものは自動人形ら、人間の残した機械等だけだ。
残された自動人形の殆どは人が少なくなった街を華やかにするために歩かされていた巡回ロボットや店番ロボットのようなもので、自我のようなものはなかったのだが、俺の最後に作った12人は別だ。
俺は人間を造った、自信を持ってそう言える出来だった。
特に最後に作った子に至っては心身ともに成長する。そんな自動人形を作ったのは俺以外の誰もいない。
しかし、あの子達は大異変でも消滅の対象にならず、あの世界はあの子らを動物とは認めなかったのだ。
それが俺は悲しい。
噂に聞くところ、ロボットでも死を迎えればこの世界に来ることがあるらしく、いずれはあの子達もこの世界に来るときが来るのかもしれない。
出来ればそれまでこの世界で生きていたいが、たぶんあの子らの寿命、耐用年数的にはそれも叶わないことだろう。
あの子らの寿命は人間には長すぎる。
本当ならば俺の子、孫とともに過ごしてもらう予定だったと言うのに何が大異変だ。
動物が全て消滅するなんて聞いたときには全く信じていなかったのに、本当に死ぬとは。
周りの人間が次々と消えていくのを見たときは本当に怖かったが、あの子達は無事だろうかと心配した。
無事だったようだが、今度は残してきてしまったという後悔。
更にはこの世界で自動人形を作ってみてもそれはただの動かない人形に死かない。
本当に、あれは最悪と言う他ない異変だった。
――シャグリス・ゴラス
「ということです、以上がお父様の手記です」
「ありがとう、メリア。まったく、お父様らしいわね」
人間が全て消え去ったあの世界での旅の果てに、私たちは壊れ、死に、この世界へ来た。
そして、お父様を探した結果見つけたのがこの記録。
どうやら、仕方ないけど私たちがこの世界に来るまでの間に死んでしまったらしい。
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