第295話:フア・ケムファ~光物はどこでもきれい~
この街で最も地味な店はどこかと聞かれたら百人が百人口を揃えて言うだろう。
「ケムファの店だ」と。
確かに僕の店は大して飾り付けなどをしていないし、他の店が競って華やかに飾り付けているのを見ても、なぜそんなことをするのかと思うほど外装に興味がない。
しかし、この街で最も派手な店を聞かれても百人が百人「ケムファの店だ」と言うだろう。
店の中で取り扱っている商品の鮮やかさでは俺の店が最も派手と言えるだろう。
うちで扱っている商品は貴金属類。
いわゆるアクセサリー等の身に付け着飾るためのものだ。
店の中は棚にずらずらと並べた指輪腕飾り足飾りが並べられており、低い天井からは首飾り等のチェーン類が提げられている。
商品の扱いとしては雑なやり方だが、この世界では大した値が付くものではないから気にしない。
需要はあるがそれ異常に供給もあるものなのだ。
それらは室内に1つしかない小さな灯りを反射してキラキラピカピカと光で音を奏でる。
眩しくて僕はサングラスを常用していて、客にも貸し出している。
ギィ、と音のなる少し重い扉を開けて客が来る。
初めて見る顔で、彼も店内を眩しそうに見回している。
「やあ、いらっしゃい。そこにサングラスがあるから使うといい」
少し目を細くしている客に対して声をかける。
「今日は何を探しにきたんだい?贈り物か、パーティにでも招待されたか、はたまた普段使い用か」
「あ、いえ、この辺にすごい綺麗なお店があると聞いて来ただけで、特に何を探しているってことはないんですが、すみません……」
謝られてしまった、
「別に謝ることはない、うちに来る客の8割、いや9割はそういう客でね、僕も綺麗なものを集めるのが趣味で、欲しい人には譲るぐらいの感覚でこの店をしている。まぁ、綺麗なものを共有したいそれだけなんだ。だからね、なにかを買いに来るというより、綺麗なものを見に来るぐらいの感覚で来て欲しい。気に入ったものがあれば買っていけばいいしね」
「……ありがとうございます」
こんなことで礼など言うものでもないだろうに、律儀な少年だ。
その後しばらく色々と見た少年は小さなブローチを1つだけ買っていった。
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