第294話:ルルニア・ローテル~ロボの様子がなにかおかしい~

 帰ってきたロボの姿が変わっていた。

 元々の人間の女性的なフォルムは失われており、表現するならばメタリックな怪物、蛇のような間接を持つ複数の長いアームを器用に操り動く、有機的なスキンもかかっていない剥き出しの機械生物。

 いったい人工生命体研究所で何があったのだろう。

「うわっ、え、なんだヘクシア、なのか?」と遭遇してしまった他の職員もそんな反応をしている。

「ロボ、何があったらそんな姿になるのです?」

「人工生命体研究所で多数の試作ボディをもらったので、色々と試しているんです、ロボ」

 アームの1つの先端がこちらに向き、マイクからロボの声がした。

「……そうなの、それでその体の使い心地はどう?」

「ダメですね、色々なことができるのは良いのですが、この体は対人用インターフェイスでは無いように思えます」

「そう、明日は変えてきてね」

 元に戻して欲しい、そういう気持ちと他にもあるのなら見てみたいという気持ちからそういう指示になってしまった。


 翌日、

「マスター、このボディはどうです?」

 とロボ(見覚えがない)が話しかけてきた。

 標準的な人形、スキンの質は元のものと比べると劣るがそれなりに見えるものだ。

「昨日のボディは対人向けではなかったようだったので、今日はおおよそ対人向けと推測されるボディを選んできました、ロボ」

 なるほど、確かに対人向けのボディなのだろう。

 ただ、デザインがどうしてこんなに厳つい顔の男性なのだろうか。

 製作者の趣味だろうか、声だけが元のロボの女性的な声なのも相まって非常にバランスが悪い。

「ロボ、声は変えられないの? その体にその声は合わないと思うわ」

「なるほど、声はアイデンディティだと思い、変更していませんでした。外見から擬似的に声帯を模倣し合う声を生成することにします、ロボ」

 どうやら案外時間がかかるらしいが、明日には実装できるそうだ。


 翌日、

「マスター、どうですか、ロボ」

 声は確かに見た目に合うようになった。

 しかし、しかしだ。

「なんで今日はそんな体を選んできたの?」

 ロボの体は初日とは違う怪物、トゲトゲしたボールのような体だ。

 トゲを器用に使って歩いている。

 そして、そんな体だからか声はキュインキュインと耳鳴りがするような音で非常に不快だ。

 その事をそのまま伝えて、数日様々な試行錯誤と多数の試作ボディを試してみたところ、最終的にロボの体は普段のものに安定したのだった。

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