第287話:カティス=メンディスⅢ〜自分がたくさんいることの有効利用〜

「おう、俺よ。ちょっといいか?」

 俺に話しかけられた、どの俺かはわからない。

「なんだ、俺よ」

 どうせこの俺も俺がどの俺なのか把握していないだろうが、応えた。

「ちょっと人手がいる仕事が入ってな、手伝ってくれ」

「いいぞ、どんな仕事だ?」

「さぁわからん、とりあえず人手がいる仕事だということと、集合場所と時間しか聞いてない。というわけだからお前も俺を見かけたら声をかけて人手を集めてくれ」

「わかった、そういうことなら手伝おう」

 時間と場所だけ聞いて別れた。


 時間になって集合場所に行くと100人程の俺がいた。

 数えたわけじゃないから正確なことはわからんが、大体そんなぐらいの俺がいた。

 俺以外も何人かいたが、俺の集団にビビっている。

 それは仕方ないだろう。

「よう、俺よ」

「おう、俺」

「仕事の内容聞いたか?」

「いや、俺も人手を集めろとしか聞いていない。なにか聞いているか?」

「いや、俺も人手を集めろとしか聞いてないな」

「そうか」

「そうだ」

 その後もたくさんの俺に話を聞いたが、誰も集められた理由について知っている俺はいなく、聞いていた開始時間まで何の情報も増えなかった。


「さて、思ったよりも沢山のヒトがあつまってええええ!?」

 時間になったとき、集まりのどこかで拡声器で増幅された声が響いた。

 なにかを言おうとしたが、なにかに驚いて話が止まったようだ。

「えーと、全員同じ顔なんだけど、これはどういう?え、不死で何度も死んでたくさん転生してきたって?」

 手近な場所にいた俺から話を聞いたらしい。

「うーん、困ったな。もしかして今日集まってもらった理由がちゃんと伝わってなかったのかな?」

 何か問題があるらしい。主催者に近い場所にいる俺よ、誰でもいいから理由を聞け。

「実はですね、今日集まってもらった理由はいろんな世界のいろんな人種の顔を合成して全世界標準顔を作ろうっていう企画だったんだけど、これじゃあなぁ」

 よくわからなかったが、集まったのが俺だけだと問題があるらしい。

 そのまま解散する雰囲気になり、徐々に俺達はその場を去っていった。

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