第277話:ミーハ~ロボットの戦野~
『どなたか応答願います!こちらは89番キャンプ担当医療ロボットのミーハです!』
だめだ、誰からの応答もない。
スリープモードから復帰したとき、周りには私が介抱していた負傷者たちはおらず、爆炎、光線、刃、鉄塊と、センサーが危険信号を鳴らすような物ばかりの見知らぬ戦場に私はいまして、そこらそこらで戦闘ロボット同士が戦争をしていました。
周囲を見渡す限り破壊兵器を惜しむことなくぶちまけているロボットばかりで、そうでないものは既に機能を停止していて、原型をとどめていないであろうもの、装甲の欠片等が散らばっていた。
集団で行動している物は殆ど見当たらず、他の機体を破壊したロボットがそのまま、別の機体に破壊されたり、共通の機体を攻撃していたと思いきや、それらがお互いを攻撃し始めたりと、どうやら私の知っている戦場ではない様子。
そもそも、知っている機体がまったくいない。
医療ロボットである私は戦場には出ないが、キャンプを襲撃されたときに迅速にどんな機体に襲撃されたかのデータを送るために敵味方殆どの機体データを持っているというのに、見たことのない機体ばかり見かける。
朝に復帰する予定でスリープモードに入ったはずなのに時間は夜、内部時計では朝の時間になっているのに空は暗く、星も見えない。
位置情報を取得しようにもアヴシステム(世界どこにいても現在位置を取得できるシステム)にアクセスすることができず、キャンプへ帰ることもできなければ、無線でどこかに連絡を取ることもできない。
そして、この戦場で戦闘能力に乏しい私が被弾したら一撃で破壊されてしまう。
一応搭載されている武器センサー(多種多様な武器兵器の類いを感知する)の反応を見ながら、こそこそと敵機(周りすべてが敵)の少ない方を探し、て移動する。
比較的安全な場所、爆発跡と思われる穴に避難して情報を整理する。
ここは元いたキャンプではない。
位置情報を取得することはできない。
誰かと連絡を取ろうとしても応答がない。
戦っているロボット達に関する情報を私は持っていない。
戦っているロボット達はお互い敵であると認識している。
周囲に生物は存在しない。
そして、私がいつ破壊されてもおかしくない、ということ。
医療用ということもあって人間に近い思考ができるようにしてある私の生存本能のようなものが警鐘を鳴らしている。
幸いと表現するのが適切かどうかは考えないとして、守るべきものが存在しないのは幸いだ。
介抱対象がいた場合、私を身代わりにしてでもそれを生かすことを優先しなければならないけど、いないのならばなにも気にすることはない。
また、戦闘の隙間を縫って行動し、どこかと連絡がとれるところまで移動しなければ。
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