第275話:モデナス~勝っても負けても~
初めてだったんだ。
私の強さを好きになってもらえたのも、断った後にも諦めずに私を打ち負かしたのも。
なのに、なんで!なんで!なんで!
先日の鬱憤を晴らすかのように目の前の木人を殴り砕く。
なんで彼は、私に勝った途端、私に興味をなくしてしまったんだろう。
私が彼に言ったことは本当だ。
顔も整っているし、強靭な肉体も私好み、さらには誠実なところなんて文句のつけようがない。
ただ、それでも彼が私よりも強くなければ愛の告白を受け入れるということは出来なかったのだ。
前の世界では自分より強い男としか付き合ってはいけないというしきたりがあって、父はそれを知らない頃の私をひたすらに強くした。
その結果私に勝てる男はいなくなり、一生誰とも付き合うことなく私は死んでこの世界に来た。
この世界に来てからも、惰性で特訓は欠かしていなかったため、以前より強くなっていて、野良試合の日々。
そして、彼と出会い告白されてからは彼との試合の日々。
すごく楽しく戦えて、ついに負けた時はすごい嬉しかった。
「ああ、やっと男性と付き合えるんだ」って。
なのに!
なんであいつは私に勝った途端に私に対する恋心が失われてしまうんだ。
私の強さに惚れたから、私に勝って恋心が消えたと、彼はそう言っていた。
まてよ?つまりこれって
私が勝つ→私よりも弱い男とは付き合えない
彼が勝つ→彼よりも弱い私は興味を持てない
ということになってしまうんじゃないだろうか。
困った、これでは一生付き合えないんじゃないか。
どうしよう……。
考えが行き詰まったところで今日の特訓も終わりだと、服に付いた木片を払って帰路につく。
そして考えても仕方がないと、彼に勝負を挑み続けることにしたのだった。
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