第265話:ガマス~割れた空間の記録~

秋季26日;記録者:ガマス

大規模空間災害を引き起こした都市痕(現在は厳重立ち入り制限区域。ほぼすべての建造物は消失し、空間自体が不安定になっている)を調査していたところ、調査員の一人が空間の歪に喰われて消失した(彼の他にも、いくらかの物品が消失していたことが後日確認した時に判明した)

彼が消失した座標にはマーカーを設置して注意を呼び掛けることにした。

他の歪を発見し次第、マーカーを追加し再発防止に努める。



秋季34日:記録者:ガマス

先日、空間の歪に喰われ消失した調査員が遠く離れた別の歪から現れた。

消失点をポイント1-1、出現点をポイント1-2として座標を添付しておく。

発見された調査員の状態が安定し次第、歪の向こう側で何を見て、どうやってこちらの空間に復帰したのかをレポートにまとめて提出する。



湿季2日:記録者:ガマス

先日帰還した調査員が安定したので、話を聞いた。

歪に踏み込んでしまった時、世界が歪んで体が捻じ切られる感覚が襲い(不思議なことに痛みはなかった)、気づけば時間が跳んでポイント1-2にいたらしい。

その後も頭の中がぐちゃぐちゃになっていて、フラットに戻ったのは1時間ほど前だ。

そのため、ポイント1-2で気が付いた時のこともほとんど覚えていないらしく、有益な情報は得られなかった。



湿季8日:記録者:ガマス

湿季も進んできて、霧が深くなってきてわかったことがある。

見通しが悪い空間での空間の歪は案外目立つ。

そうして、霧の粒子が吸い込まれている歪と吐き出されている歪で別れていることもわかり、調査が大幅に進んだ。

いくつかの歪は対応していると思われるので、吸い込む側の歪に色付きの煙を吸わせ、対応する歪を探して番号を振って行くことにする。



湿季13日:記録者:ガマス

先日提案した調査方法は問題が発覚した。

元々わかっていたことだが、歪に吸い込まれてから出てくるまでにはタイムラグがあり、いつ出てくるかもわからないので無限に時間を使われる。

改善が必要である。



湿季17日:記録者:ダガサト

今まで記録をしていたガマスは不注意によるものか意図的な物かは不明だが空間の歪に喰われたので、ダガサトが引き継ぐ。

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