第235話:アクリ・バス〜バトルスカイガールズ〜
高速で飛行する。
追い付かれないよう、真っ直ぐに。
そして誰も何も全てを置き去り音も、光りも全てを置いて真っ直ぐに真っ暗に飛ぶ。
「……クリ……アクリ……!」
声が聞こえる、音も何もかも置き去りにしたはずなのに、私を呼ぶ声が聞こえる。
「アクリ!」
ハッと目を覚ます。
私を呼ぶ声は耳元にピタリと張り付くように浮かぶ通信カードから聞こえる。
「アクリ……、よかった気がついた。早く体勢を立て直して、墜ちるよ」
カードから聞こえる声が言う。
私は真っ直ぐに頭から落下していた。
そうだ、今はバトルの最中だった。
確か攻撃を避けきれずに被弾したんだったか、それで気絶してたみたい。
通信先、ロミアに対して聞く。
「ロミア、私どれくらい寝てた?」
「20秒ほどだけど」
「ありがと」
高度をそれなりに取っていたのが幸いし、気絶してから撃墜扱いになる高度まで落ちる間に目が覚めた。
「さぁて、やり返そう!」
スカイウォー。
飛行魔法術式を継続展開するカードを縫い込んだ専用スーツを着て自由自在に空を飛び、それぞれが選択装備した術式カードで相手を攻撃、規定高度よりも下へ落とすことでポイントになる。
この世界でもそれなりにメジャーなスポーツで、私とロミアはタッグだ。
「ちきしょー、なんで負けるかなぁ」
結局さっきのバトルは負けた。
「彼女の置き符は予測不能だから仕方ないよ」
対戦受付ロビーに戻ってきて二人でさっきのバトルのおさらいをする。
対戦相手のコルトローは置き符のコルトローとまで呼ばれる程の置き符の使い手。
「種はわかってるんだから、避けられないわけがないんだけどなぁ」
派手な飛行術式に紛れてカードを隠し置く。
それだけのはずなのになぜ避けられないのか。
「あら、知りたい?」
コルトローだ。
嫌みなこいつは私たちがバトルの後におさらいしていると隣のテーブルにやって来てちょっかいをかけてくるんだ。
「別にいいわ! すぐに貴様に勝ってやるからな」
「そう、じゃあ今からもう一回やる?」
「いーだろう、やったろうじゃねーか!」
「やめようよぉ、また負けちゃうよ」とロミアが言ってくるが無視だ。
引きずって受付に連れていく。
「なぜだー!勝てんー!」
また置き符にやられた。
「これで私の20勝ね」
何か仕掛けがあるはずだ。
単純に目眩ましして死角に置く以外の何かが。
「ていうか、サポートのロミアはともかく、なんであなたからは攻撃してこないのよ」
「はぁー?そんなもん置き符を攻略してお前に勝つのが最高にかっこいいからに決まってんだろ。ぶっちゃけお前なんて私が本気で攻撃したら瞬殺だぞ瞬殺」
「たまには本気のあなたに勝ってみたいものだわ……」
瞬きのアクリなんて呼ばれる私を倒すためだけにこいつは置き符なんて糞面倒な技を磨いてきたのだ。
その置き符を攻略してからしか瞬きなんて名乗ってやんねーからな。
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