第188話:イーリス・バッス・ラクレームⅡ〜元魔王対元勇者〜

「はぁ? 正気か元魔王」

「もちろん正気だとも、元勇者よ」

 日が爛々と輝く昼、寒い庭で元勇者に正気を疑われていた。

「最近運動しておらんからな、体が鈍って仕方がない、もちろん命を懸けた本気の死闘などする気はないぞ? 単純なお遊び組手だ」

 つまりは、体をほぐすために模擬バトルしようという話だ。

「体が鈍っているのはおまえだけだ、俺は普段から戦っている。鈍って困るというのならば、魔物狩りに付き合え」

「よし、ならばこうしようではないか、貴様が勝てば我も魔物狩りに付き合ってやろう」

「それで、おまえが勝ったらどうなるんだ、どうせなにか要求するんだろう?」

「うむ、我の暇潰しに付き合ってもらう」

「まさに今も付き合わされている気がするが、まぁ、それぐらいならいいか、かかってこい」

 納得したようで、デヴィンは構える。

「ふっふっふ、この世界に来て子供になった貴様で我に勝てる気か」

 かつての戦いの再現が始まる。

 と思いきや、完膚なきまでに負けた。

「何故だー! なぜ子供になった元勇者なんぞに我が負ける!」

「あの頃のおまえは強かったなぁ」

 腕を固められて、魔法も放てぬように指まで固められている。

「あの頃のおまえは、どうしたら世界を征服できるかを考えて努力してた、と思う。しかしだ、今のおまえは毎日怠惰に過ごしているだけだ、こたつという暖房器具が素晴らしいのはよくわかる」

「ぐぬぬ」

「そして、最も大きなおまえの敗因はだ、おまえも転生しきて普通に能力落ちてるからだ」

「…………なんだと?」

「いや、おまえ気づいてないかもしれんが、俺が子供の体になってるように、おまえもあの戦いの時に比べてすごい弱くなっているぞ」

「…………全く気づいていなかった」

「だろうな、気づいてたらこんな勝負挑んでくる訳がないんな。まぁとはいえ、勝ったのは俺だ、これからは俺の魔物狩りに付き合ってやろうぞ」

「ぐぬぬ、約束は約束だ、付き合ってやろう」

 リハビリも兼ねて、狩るか!

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