第167話:モロノコ〜初めての独り暮らし!〜

 さてどうしたものかと、目の前の機械をにらむ。

 使い方がわからない。

 汚れけがれは溜まりきっているのだ、目の前のこの機械を動かし、浄化せねば、僕は汚れに呑まれてしまうだろう。

 目の前の機械には複数のボタンがある。

 おそらくセキュリティーのために間違った操作をすると爆発したりする気がする。

 爆発したと言う話を聞いたことがあるわけではないが、僕が設計者なら間違いなく爆発させる機能をつける。

 だから、慣れるまでは慎重に動かさなければならないのだ。

 そんな風に考えていて、放置していたら汚れが溜まりすぎてしまったのだが、いい。

 もう、今この機械を動かさねばダメなところまで来てしまった。

 さて、どうしたものか。


 よくよく考えれば汚れなどいくら溜め込んだところで死にはしないし、この世界では保証されてるのだから、捨ててしまってもいいだろう。

 さて、次だ次。


 次は生きる糧の加工だ。

 これも、特に必要はない。

 加工されたものが支給されるからな。

 たまには自分で加工しようと思うこともあるが、大抵うまくいかないからなしだ。

 たまに爆発もするしな。

 さて、次だ。


 次は先程とは違う汚れの除去だ。

 特に部屋のすみに溜まりやすい。

 これは操作の必要がない機械が自動で巡回して除去して隔離してくれているから、気にする必要はないな。

 これもなにもする必要はない。

 次は、なんだ。


 機械が集めた汚れを外に持ち出す作業があるか。

 透明な保護袋にまとめられた汚れを持って部屋の外に出る。

 結構重いな。

 ついでに生きる糧を買いに行くか。


「あれー、モノちゃんじゃないのぉ」

「あ、おばちゃん。お早うございます」

「今ゴミ出し? ダメよぉごみはもっと早い時間に出さなきゃ」

「そうなんですか?」

「回収の時間は2時だからね」

 そういえば今は3時過ぎか。

「もし、その時間に出せないのなら家庭用トランスポーターゴミ箱を買うといいわよぉ、便利だから」

「へぇ、そんなのがあるんですね」

 帰ったら買っとこ。

 というか、こんなごみ袋を持ったままお昼御飯とか買いにいけないし、一旦帰るか。

 部屋に戻ると、山積みにされた服の山と、焦げた台所が目に入った。

 独り暮らしも楽じゃない。

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