第153話:ケルポ_ソーン〜仮想大戦〜
目の前にはただっ広い荒野、そこには万の軍勢。
それの総指揮が俺だ。
先頭から400クロン程の距離をおいて相対するのも同数の軍勢、それを指揮するのは積年のライバル。
まだ、両軍ともに動かず、俺は目の前に浮かんだ戦術コンソールに戦術を入力している。
遠すぎて見えないが、あいつも同じように入力しているのだろう。
入力を終え、最後に一通り確認して、入力完了の表示をタップする。
あいつは既に入力を終えていたようで、タップした直後からカウントダウンが始まった。
20から始まり、一つずつカウントは進んでいく。
そうなってから、先ほど入力を完了した戦術の不備を思い出したりしてくるのはなぜだろうか。
そんなことを考えながら、カウントはゼロになった。
両軍、同時に走り出す。
両者の間に空いていた400クロンという距離は短く、すぐに先頭の兵がぶつかる。
俺の兵が着込んでいるアルテミアリニウムのバワードアーマーに、あいつの兵の持つリムトルンドの剣が叩き込まれる。
しかし、リムトルンドの剣ではアルテミアリニウムのパワードスーツは破れない。
それはこちらも同じリムトルンドの剣を振るい、相手は同じアルテミアリニウムのパワードスーツで受けているので同じことだ。
どうやら、先頭はお互い攻撃力と防御力を30:70程の割合で振り分けて、お互いに攻撃が通らないという状態になっているらしい。
まぁ、想定通りだな。
それはあいつも想定していたことだろう。
しかし、これは流石に想定外だろう。
俺は30:70の群れの中に、数人90:10という攻撃に振った兵を紛れ込ませていた。
それらの振るう剣はカノムトロム、最高の攻撃力を持つ剣だ。
それを受けられるのは10:90に振ったときに装備されるヒメルタイトの盾だけだ。
紛れ込ませたカノムトロムの剣を持つ兵は確実に相手の兵を削っていた。
そして、後続の魔法部隊が相手の飛ばしてくる大質量弾を前衛のぶつかっている真上で撃ち落とす。
当然砕けた破片が最前線でぶつかっているお互いの兵の上に降り注ぐが、防御力70には効かない。
そこまで考えたところで「しまった、」と呟く。
防御力70の兵には効かないが、10の兵には致命打だ。
まさか、紛れ込ませることをあらかじめ読んで質量弾を採用したのか。
魔法弾の方が取り回しがよく、質量弾の採用など、普通はしない。
「やるなぁ」
しかし、戦いはまだ序盤。
どうなるかは、まだわからない。
戦局を三倍速で進めて一時間後、お互いの兵は殆ど倒れ、俺は敵の兵に剣を向けられていた。
戦術コンソールの降伏ボタンをタップして些細な喧嘩から始まった、バーチャル会戦ゲームは俺の敗けで終了した。
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