第152話:ネジャ・ナルノ〜ハンマーハンマー〜

 非常に大きなの大槌【バングラム質量の化け物】を振るう。

 超質量の鉄塊は魔物の頭部を、それが何だったかもわからぬ形にしてしまう。

 怪物の名を冠する大槌を振るうのは私、【ナルノ怪腕】の名を与えられた小人族、名をネジャといいます。

「ところで、これ、どの部位を持って帰れって言われてたんだっけ?」

 頭部の失われた虎のような魔物を指してパートナーに訪ねる。

「牙ですね」

「しまった、全部粉々だよ」

 頭部がまるごとペチャンコになっているのだ牙など一本たりとも残ってはいない。

 クエスト失敗か。


「なんで毎回クエストに失敗するんだ?」

 場所は変わって魔物ハンターギルドの待合所のテーブル。

 向かいにはパートナーのカウス・ロントル。

「誰のせいだと思ってるんですか」

「ろくに魔物の一匹も狩れないお前のせいじゃないのか?」

「クエストの内容も理解せずに頭を潰しまくるあなたのせいです」

「そうは言ってもな、頭を潰すのが一番楽なのだが。

 そうだ、頭を潰しても良いクエストを受ければ良いんじゃないか?」

「そういうクエストもありますね、受けるんですか?」

「何を言っているんだ、受けない選択肢とかないだろ」

「そうですか、後悔しないでくださいね?」

「なんだ?」


「まてカウス! こんなのは聞いていないぞ!?」

「頭を潰しても問題ないクエストですよ、収集物はそいつらの背の皮膚なので」

「そういうことじゃない! こいつらの頭ってどこにあるんだよ」

 カウスが、受けてきたクエストのターゲットは大ナメクジ、ヌメヌメペトペトだ。

 私はこういうヌメヌメペトペトが一番苦手なんだ。

 そうだ、前にもカウスがこういうクエストを持ってきたことがあったような気がする。

 それで、こんなのは無理だ、と私が言ってそれ以来こういうターゲットのは受けていなかったはず。

「どうしたんだい、頭を潰すのは楽なんじゃなかったかい?」

「もういいから! わかった、次からは気を付けるから、頭を潰さないようにするからさ! こいつらを消してくれ」

「わかった、次からは気を付けてくれ」

 そう言うと、カウスはパチンと指を鳴らし、【ロントル奇術】の名を与えられた由来となる力を発動する。

 空間に音が響き、気づけばヌメヌメした大ナメクジたちは消えていた。

「いやー、助かったよ」

「まぁ、クエストは失敗だけど」

「あー、次から頑張ろうか」

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