第141話:トル・ドッキ〜剣を探し求める人〜
死んで愛剣を失った。
死んでも思い入れのある品は死後の世界に持っていけると思っていたのだが、そうでもなかったようだ。
転生直後は手ぶらで、簡素な衣を纏っていただけであり、思い入れのある品など何一つ残っていなかった。
生活雑貨等はある程度は適当な代用品を探せば良いが、流石に武器とかとなると、体に合ったものが使いたい。
体も縮んでしまっているから、今まで使っていた武器が体に合うかどうかというのも微妙なところだが。
とにかく、今の体に合う、最高の武器を探したい。
とりあえず魔物ハンターギルドで貸し出されている武器を一通り試す、だめだな、貸し出し武器は損耗前提の量産品だし、命を預け続けるには足りない。
銃という遠距離武器を初めて扱ってみたが、汎用性に欠けるし、威力も足りない。
副武装としては有用だが、主武装とするには心許ないという印象だ。
やはり、貸し出し武器ではだめだな。
武器屋に見に行ってるか。
この世界で一番大きい武器屋がある、グルヴェートにやって来た。
中心にある街であり、様々な世界の人が集まっている街なので、さまざまな世界の技術で作られた武器がある。
少なくとも、ギルドの貸し出し武器よりも品質の高いものがあるのは間違いない。
「ローメンロクロスの勇者の武器を鍛えた鍛治師の最新作」
ローメンロクロスの勇者がどんな存在と戦っていたのかはわからないが、こんな大々的な宣伝文句としているということはそれ相応の品質なんだろう。
「試し斬りさせてもらったてもいいですか?」
「どうぞー」
許可も得て試用部屋に行き試し斬り用の人形を軽く斬る。
切り口は綺麗で、斬るときも引っ掛かりも感じず、とても良い品だとはわかったが、普段から携行するには重い、大人の体ならば気にならない程度の重さだが、子供の体では厳しい。
子供の体でも扱えそうな重さのものはだいたい切れ味が微妙だし、魔法で軽くしたり切れ味を良くしたりしているものは、総じて高価すぎるし、魔法がかかった武器は使っていて違和感がある。
ダメだな。
軽くて切れ味が良くて高すぎない。
贅沢言い過ぎかもしれないが、そういう武器が良い。
どこへ行けばそういう武器が手にはいるだろうか。
そういえば、高名な鍛治師の打った品が出回っているということは、当たり前だが鍛治師が転生してきて、活動しているということだ。
直接頼んでみるというのはどうだろうか。
鍛治師はどこで活動しているのだろう。
お店の人に聞いてみた。
「鍛治師がどこにいるか? そりゃあルースって街にある、万物の炉だな。
あそこには世界中の鍛治師が集まってるんだ」
ルースか、行ってみよう。
ここが万物の炉か。
外からでも鉄を打つを音が聞こえてくるし、近づくだけで肌寒い季節を吹き飛ばすぐらい暑い。
入ってみると、沢山の小部屋があり、そのそれぞれで鍛治師が作業しているのだろう。
困った、これじゃあ直接依頼なんて出来そうにないぞ。
どうしようか。
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