第132話:アタ_トル〜夢だと思った〜
「君は死んだんだ」
「へぇ、そうなんですか」
卵のなかで目を覚まし、白を基調とした天井の高い広間で僕が死んだということを女の子から説明を受けている。
「いやに淡白だな、死んだんだぞ?」
「いやぁ、僕は特に気にしませんね」
「ふむ、君は少し人間として不備でもあるんじゃないか?」
「そうですか?説明が終わりならもう行きたいんですけど」
「ああ、そうだね。じゃあ、あの扉を出て左の8番目の受け付けに行くといい」
「わかりました、では」
それだけ話して僕は次のエリアへ向かう。
左の8番目か。
「やぁ、来たね。この先は君と同じ世界から来た人の暮らしている街だ。
まぁ、街と言っても規模はとても大きい。
君は田舎の生まれかい?」
「いえ、ルトニアの首都の出身です、そこそこの都会ですよ」
「そうかい、ならあまり心配はないな。この世界は進んでるからなぁ、田舎もんは気絶するぐらいの大都会だ」
「そんなにですか」
「ああ、参考までにどんなところに住みたいか聞くぞ?」
「そうですね」
どうせなら
「眺めがいい高層タワーのペントハウスとか」
「高層タワーのペントハウスだな、丁度空きがある、待つ必要がなくてよかったな」
「人が入ってたら空くまで待たなければならなかったのか?」
「いんや、新しいタワー一本建てるだけだ、2、3日あればすぐできる」
僕一人のために新しくタワーを作るってのか、すごいな、そんなこともやってくれるのか。
その後、軽くこの世界で暮らすに当たっての注意点を説明されたが適当に聞き流した。
「はい、じゃあ最後にこれね」
そう言って渡されたのは一枚のカード。
「それはこの世界でお金を使うためのカードで、ここのところに数字が表示されているだろ?」
指で示されたところを確認する、5000と表示されている。
「まぁ、最初は5000パソ入ってるけども、
魔法も使えるのか、すごいな。
さすがと言った所だな。
「これで説明は終わりだ、じゃあ、第二の人生を楽しめよ」
「ええ、楽しんできますね」
別れの挨拶を交わし、僕は街へと繋がっているらしいゲートをくぐる。
「うわぁ」
街に出てみるとすごい、僕が住んでいた町と町並みはあまり変わらないが、細部が全然違う。
でも、流石に田舎者が気絶するっていうのは言い過ぎかなぁ、僕のどこからそんなことばが生まれたんだろう。
とりあえず、ゲートから出たところに役場があって、そこで住居の申請とキーコードをもらうんだったな。
指示にしたがう必要はないと思うけど、従わないと話が変わってくるし、従うことにしよう。
それにしても、煩雑な手続きを夢の中でやることになることになるとは思わなかった。
翌朝、起きて最初に思ったことは
「夢じゃなかったのか」
だった。
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