第117話:キリリ◇ポーフ〜時間の定義特集〜

 この世界での時間の数え方がおかしいと思っている人は結構いると思う。

 そもそも知らない人も多いと思うんだが、この世界では一時間を日が点って明るくなってから衰え暗くなるまでの時間を16分割した物を指す。

 それはいい、確かにこれだけ聞くとわかりやすい数え方に聞こえる。

 しかしだ、この数え方だと夜の長さが中途半端な時間になる。

 一日は平均的にに43.9375時間という、実に中途半端な時間に値になってしまう。

 なにより、この世界では一日の長さが一定ではないのだ。

 日の灯る時間と夜の時間のバランスも変わるし、それぞれの時間も変わる、だから時期によって一時間の長さは異なる。

 これにより、大昔の時計職人達は非常に頭を悩ませたことだろう。

 時計は8角形が基本形ではなく、数字を文字盤に表示するタイプが一般的だ。

 たまに、どこかの世界の時計職人が作ったのか、色のついた水滴がメモリを刻んだ透明な柱の中を上下するタイプや、円盤の上をいくつかの針が回るタイプのも見かけるが、基本的には先程も挙げたように数字で表示する物が多い。

 確かに見やすいのだが、時計という感じが薄い。

 単純に言ってしまえば、俺の知っている時計と違って気持ち悪い。

 時計は気持ち悪い形にせざるを得ないし、一日は中途半端な時間になるし、いつどういう基準で決められたんだこの世界の時間は。


 というわけで、この世界の時の歴史に詳しい九千年ぐらい生きてる博士のところへやって来ました。

 見た目だけなら俺よりも若い。

 これだけ生きている博士なら時間の定義に関わってそうだ。

「それで、なんでこんな中途半端な時間の定義のしかたになってるんですか?」

「そうですね、この世界の時間の定義が成されたのは、おおよそ七百万六千八百年程前だと言われていまして」

 思ってたより一千倍ぐらい前だった。

「その当時の最先端文明の人々が、様々な世界の文化を見て、すべての世界で納得のいく形式を考え調査した結果、7割程の世界で太陽を元に時間の定義がされていることがわかったのです」

「それで太陽の時間を元に一時間を決めちゃったんですか?」

 それで、こんな一時間の長さにムラがあるとか、昔の人は詰めが甘すぎる。

「そうとも言えなくて、昔は一日の長さが一定だったという記録もあるんですよ。その時の一日の長さだと昼を16分割してちょうどよかったらしいですね」

「9千年ぐらい生きてて一日の長さの変わり方が大きくなっている感じってありました?」

「いやぁ、ないかなぁ。僕は昔の人の言い訳だと思ってるよ」

「そういうもんなんですか」

「そういうもんだよ」

 はっはっはと笑う博士、現代の博士がこんな感じなのだし、大昔の博士が適当に時間を定義してても不思議ではないですね。

 では次回。

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