第78話:ドロースⅢ〜休日、休めない〜
いつもはバイトばかりしているのだが、今日は休日。
家で体を休めていると、ドアベルが訪問者を告げる。
「ドロース、いるのだろう?」
この声は、あいつだ。いないことにしよう。
「うむ、いるのだな。入るぞ」
返事なんてしてないのに!玄関にも鍵がかかっていたはずなのに!
玄関のドアが開く音がして、すぐに穏和な笑みを浮かべた痩身の男性が僕の前まで来た。
「ふむ、体を癒していたところだったか、そのままで良い。今日は少し聞きたいことがあってな」
僕は昨日の仕事で体を痛めたため、回復ポッドに入っていて逃げられない。
「久方ぶりに家に帰ってみれば、身に覚えのない領収書があってな?貴様、何か言うことがあるのではないか?」
怒気が染みだす声で訪ねられる。
そう、一季程前のこと、僕は仕事中のいざこざで5億パソ程木材を買ってしまったのだ。
それも、勝手にこの人の名を出して。
「すみませんでしたぁー!」とばかりに首を差し出すところだが、回復ポッドに入っていてはそんなこともできない。
「いや、そのですね、それには事情がありまして」
「聞いたよ、不条理な仕事を振られ、弱者を助けるために使ったのだろう。そうならばそうと早く言えばよいのだ、言えばすぐにそんな企業はこの世界から消滅させることができたのだぞ?」
ぐうの音もでない。
というか、そうは言っているが、こいつの事だ、既にあのバイトを出していた企業はこの世界から消滅して荒野に苗木を植える仕事でもしているんじゃないだろうか。
しばらくこの調子でぐちぐち言われ、途中からなんだか関係ない気がする気の持ちようとか、精神修行とかそういう話の方向にぶれまくった。
「現場では勇ましく監視のものに啖呵を切ったと聞いていたのだが、その後がいかん、なぜすぐに私に頼らなんだのだ」
「いや、やっぱり無断で5億も使ったら、言い出せなくて」
「それは仕方ないだろうな」
あれぇー?
「え、なんで!?それを怒りに来たんじゃないの?」
「うん?私は叱られてばつが悪そうにしている貴様を見に来たのだぞ?」
「もしかして、暇なんですか?」
「うむ、奇跡的に今日はなんの予定もなく、久々に家に帰ってみたら貴様が今日は休息日だと知ってな」
なんで家に帰ったら僕が休息日だと知ることになるのだろう。
「あ、そうだ。今回の5億パソも借金に追加しておいてください、確かあと86……」
「今回のが借金に追加?ああ、心配するでない、貴様が買った木材をしかるべきルートで売りさばいたらむしろ増えたわ、軽度な歪み具合が良いとな」
「はぁ」
「よい買い物だったのではないか?これで貴様の借金の残りは、74億パソぐらいだな」
それだけいって帰っていった。
あと、74億パソか、大分減っているが、まだまだ返さなければならないお金は莫大だ。
しかし、休日で回復ポッドに入っていたはずなのに、余計に疲れた気がするのはどうしたら良いだろうか。
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