第69話:ロンノ_ザック〜死んで生き返れない〜
「これで止めだ、なぁに、すぐに生き返らせてやるさ」
ドッ
俺は死んだ。
「くっそ」
生き返って早々悪態をつく、どうしても勝てない。
あいつ強すぎるだろ、俺だって努力しているというのに。
ていうか、ここどこだ?玉の中?あいつなんでこんな変なところで蘇生したんだ?
「気がついたのであれば出てきてくれる?」
知らない女の声だ。もしかして、俺を蘇生させたのはあいつじゃない?
「君は誰だ?どうして俺を生き返らせた?あいつは、ヤノはどうした?」
「あー、死んだ経験がある人ね、その辺を全部説明するから出てきてもらえるかい?その壁は簡単に割れるから」
仕方なく、指示にしたがう。確かに壁は触るだけで砕け、簡単に破れた、壁と言うより殻だな。
「さて、改めて説明するね。君は死んだ、それはわかっているね?」
「ああ、そして君が俺を蘇生させたんだろう?俺の体をどうやって手に入れた?そばにいた男はどうした?」
「うーん、まずは君の誤解を解こうか。
まずね、君は生き返ったわけではないということ」
「生き返った訳じゃない?ならば俺はどうしてここにいる」
「ここが所謂死後の世界というやつだからさ、あ、君の世界には死後の世界って概念はないんだっけ?死後の世界っていうのは、死んだ時に来る世界のことなんだけど」
「いや、何となく意味はわかる、俺は生き返ってない、死者達の世界に来てしまったのだろう?」
「飲み込みが早くて助かるよ、この世界はそういった死後の世界なんだけど、君が知っている世界とは大分異なる、このホールを見てわかると思うんだけど、君のいた世界と比べて技術力がかなり上を行っているだ」
「ああ、確かに」
「あまり驚かないんだね」
「ん、なに、ヤノがかつて言っていたことがあってな、こういう世界があるって」
「ヤノさんって人は、もしかして異世界から来た人なのかい?」
「ああ、確かに「こことは違う世界から来たんだ」と言っていたな、それはこの世界なのか?」
「この世界からもとの世界や違う世界に行った人がいるという記録はないから違うだろうね」
「そうか…………」
「さて、ここからは君の今後についての話」
「今後?いや、俺はこの世界に長居する気はない、すぐにヤノが蘇生してくれるだろうから、そうしたらすぐに帰るよ」
「まだ誤解が残ってたね、この世界に来たら、帰ることはできないんだ」
「蘇生術を使っても?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ俺とヤノの約束はどうなるんだ!」
あいつは俺と、世界を救うために修行してて、まだ俺の方が弱いけど、それでもあいつの助けになればって…………。
「それは問題ないよ」
「は?お前に俺たちの何がわかるっていうんだ!」
「少なくとも、君はヤノさんとの約束は守れる、君と言っても、生き返った方の君だけどね」
意味がわからない。
「この世界に来た人でも普通に生き返れる世界では生き返ることはできる、君は戻れないけどね」
「もうちょっと分かりやすく説明してくれないか?」
「死んで生き返ると、二人になるんだよ。この世界と、もとの世界とで二人に」
「つまり、今こうやってこの世界にいる俺とは別に」
「もとの世界でヤノさんと語り合ってる君もいるってこと」
「それは、どうなんだ」
「どうとは?」
「いや、なんというか、大変、奇妙な感覚なんだが」
「ああ、大体みんな同じような反応をするよ」
「そうなのか、うーむ、しかしなぁ」
やっぱり、釈然としない。
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