第60話:イムデラ-ラストルⅡ〜電獣は雨に弱い〜

 最近雨が多いな。

 雨季に入ったので仕方ないとは思うが、こんなに降り続くとやはり鬱陶しい。

 テルヴィアに越してきてしばらく経ち、もう何百匹と電獣を狩ってきたが、未だこの街には沢山の電獣がいるだろう。

 しかしだ、この時期は暇になる、雨季は電獣が表に出てこないのだ。

 俺はあまり詳しくはないのだが、雨が降ると電獣の体を構成している電気が空気中に拡散してしまい、弱ってしまうため、電子機器や電線の中から出てこないらしい。

 そんなわけで、雨季の間は暇になってしまうのだ。

 暇だが、あまり外出をする気分にもなれないし、今日はどうするか。

 昨日も一昨日もなんだかんだで家でゴロゴロして、たまに室内に現れる弱った電獣を苛めたくらいだったしな。

 窓から外の通りを見下ろしてみると、意外なことに結構人が出歩いている、ペケメンDOとか言うゲームのブームは過ぎ去っていないようだ。

 それにしても、雨の中よくやるな。傘も差していないようにみえる。が、よく見たら雨がすべて人に当たる前に弾かれているようにみえる、テルヴィアなのに、魔法が使われているのか?

 確か、ああいう傘魔法があったはずだが。

 そういえばそんな科学アイテムが開発されたって話がテル通(テルヴィア通信の略、テルヴィア内部で有用な情報を発信している)で来てた気がする。便利そうだし俺も買っておこう。

 携帯端末デバイスを操作して、その傘アイテムの情報を出す。

 お、うちの棟の一階にあるエントランスモールに取り扱っている店があるな、買いに行っとこ。



 買った、様々なアクセサリーモデルがあったので、一番使い勝手が良さそうな腕輪型にした。

 それにしても、この都市はどんなことにも電気を使う機械を使うな。

 2階にある自宅から1階に降りてくるだけの階段も自動で動いていたし、店員も自動ロボだ。

 当然扉は全て電動だし、エントランスホールに飾ってあるオブジェも派手に放電している。

 この街は更には大量の電獣が潜んでいるから、とんでもない量の電力が電獣の餌に消えているはずだが、どんな発電設備を備えているのだろうか。

 ちょっと見に行ってみるか。

 雨だが、せっかく最新の傘を買ったのだ、せっかくならば外出したい。

 携帯端末デバイスで調べてみれば、ここからだとテルヴィア第4発電所が歩いて行ける距離にあるようだ。見学もできるらしい。

 早速行ってみよう。



「これが、テルヴィア第4発電所か」

 でかい、外見はカラフルな竜巻を固めて逆さにしたもののようだ。

 建物周囲の敷地は公園になっており、色々な発電機の模型が置いてある。

 それで肝心の発電所の中なんだが、入った途端電獣の反応があった。

 狩りながら発電所内部を廻り、一通り廻った時には既に日が衰え始めていた。

 結局、電獣を狩っていてどういう発電設備だったかは全くわからなかった、また今度、また今度ゆったり見に来ることを心に決め、発電所を後にした。

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