第46話:ミスリ-ハープとミスル-ハープ〜体を分けた双子〜
目を覚ますといつもと違う感じがした。
いつの間に眠ってしまったのかということや、変な容器の中で寝ていたこともそうだが、その容器の中で私以外にもう一人小さい女の子が寝ていたことだ。
私と彼女はほぼ同時に起き、二人で顔を見合わせていた。見覚えがある気がするが、誰だかはわからない。相手も似たようなことを思っているのかもしれない。
「あの、」私から声をかけようとしたとき、
容器の外から声をかけられた。
「気がつきましたか?その卵は割っちゃってもいいですから出てきてくださいね」
たまごとはこの容器のことだろうか、外からの声を聞いた目の前にいた彼女は躊躇いなく、卵を割って外に出た。私もそれに倣う。
外にいたのは私と同じくらいの、と考えたところで、私も一緒に寝ていた女の子と同じくらいの体格になっていることに気づく。
「えーっ!なにこれー!?」
「いちいちうるさいなテメーは、何をそんなに驚いてんだガキが」
一緒に卵に入っていた方がそんな言い方をしてくる、見た目が子供なのは一緒だが、彼女もまだ大きいときのままの気分で、自分の目線の高さには気づいていないようだ
「悪態をつくのは自分の体をしっかりと観察してからにしたらどうです」
卵の外にいた人が言うなり、怪訝な顔で自分の体を見下ろした彼女はさっきまでの私と同じような反応をした。
「あんた、なにか知ってるんじゃねーのか?」
「ええ、私はそれを説明するためにここにいるのですから」
彼女が言うには、私達は死んでこの世界で生まれ直したらしい。
「それで、なんでこの人と一緒に卵のなかに私がいたんですか?」
「そーだよ、今聞いてた話だと普通は一人に一つの卵らしいじゃねーか」
「それなのですが、たまーに特殊な例もありまして、お互い、心当たりとかあっあったりするんじゃないですか?」
「ねーな!」
いや、少しだけある。
この、粗暴な感じ、見たことある気がする見た目、一人に一つだけの卵。
「もしかして、ミスル?」
「なに、私の名前知ってるのか?誰だよテメー」
やっぱりそうだ、彼女はミスル、私が生まれたときから一緒にいる子だ。
どうりで見たことのある顔なのにピンと来ないわけだ。
「わかんない?私だよぉ、ミスリだよぉ」
「はぁ!?ミスリがここにいるわけねーだろ」
「そのまさかなんですよ、あなたミスリって言うんですね、登録するのでフルネームで」
「あ、はい、ミスリ-ハープです。こっちの子はミスル-ハープ」
「はいはい、ミスリ-ハープさんと、ミスル-ハープさんね」
そう言って、板状の機械に打ち込んでいく。
ミスルは「なんでテメーが答えるんだ」とかぶつぶつ言っている。
「それでは、ミスリさんの方はなんとなく理解しているみたいですけど、ミスルさんの方が何が何やら分かっていないようなので、説明させてもらいますね」
「なんだよ、バカにしてんのか?」
「ミスル、そんなに喧嘩腰にならないでよぉ」
「バカになんてしてませんよ、大体の人は状況を理解できませんから、むしろミスリさんの理解力が高いです」
私頭いいってほめられてる?えへへ、嬉しいなぁ。
「ニヤニヤすんな、キモいぞ」
「ひどーい、そんな言い方ないでしょ」
「二人で話されちゃうと話が進まないんですけど、聞いてくれます?」
「あ、はい、すみませんでした」
ミスルはふんっと鼻をならしただけで、返事はしなかったが、聞く体勢のようだ。
「では、まずあなた達の今の状態についてですけど、あなた達は元の世界では二人で一人だったってことであってるわね?」
「そうです」
「そうだけど、なんで知ってんだ?」
そうなのだ、私とミスルは二人で一人、自分で言うのもなんだが、真面目で優等生なミスリと、粗暴で強いミスルの二人が生まれたときから一つの体で生活していた、どちらが本当の自分とかではなく、どちらも私なのだ。
「この世界は死んだ者が生まれ直す世界なので、同じ肉体に宿る二つの魂が死んで、それぞれ生まれ直したのがあなた達なの。つまり、分裂しちゃったってわけ」
なんとなく、察しはついていたが改めて説明されるとやっぱり少しだけ驚く。死んでしまったということは悲しいけれど、これからはミスルと二人、顔を合わせて話すことができるというのがやっぱり嬉しいのだ。
「というわけで、これからよろしくね、ミスル」
「これからも、だ、バーカ」
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