第12話:カーティ=ロシャ~異能力バトルを死亡退場した結果~
私は異能の力を持っている。元の世界ではその力を使って他の異能力者と戦っていたのだけど、誰にかはわからないけど殺されてしまった。そうしてこの世界にやってきたわけなのだけど、戦いの日々から抜け出せたことを考えるとよかったのかもしれない。死んだのはいい気分では無いけれども。
異能の力も消えていないけど、まぁ、この世界で使うこともない。
「そういや、あの戦いって結局どうなったんだろ」
もう転生してきて二年程経っているが未だにあの戦いの経験者とは出会っていない、転生してきた時の話だと、大体死んだ人はこの世界に転生してきているらしいのに、私以外にこの世界に来ていないということはないだろう。流石にあの戦いで私以外に死者が出ていないとも思えない、自分で言うのもなんだが私はかなり強い方だったから、私を殺した奴が他のみんなを殺せないわけがない。死んだ直前の記憶が曖昧なので誰にどんな殺され方をしたのかわからない。
というか、なぜ私を殺したのだろう。あの戦いのルールでは相手を殺したりしたら異能を消されてしまうというのに。わからない、わからないことだらけだけど、まぁ、悩んだところでどうにかなるものではないか。
「あれ?君は確かカーティさん、だったっけ?」
元の世界の言葉で話しかけられた、誰だっけこの人。元の世界での知り合いかな?こんな男の子みたいな喋り方の子いたっけ、転生してくるとみんな見た目若くなっちゃうからわからないんだよなぁ、でもこの人、見た目元の私と同じくらいだし、もっと前に転生してきた人だよね?。
「あ、ターミナルで最初に案内してくれた人か」
私服だと印象変わるなこの人。
「覚えてくれてたのかい?それはうれしいね」
「まぁ、最初に会った人だし。それで、何か用?」
「別に、用があるわけじゃないけど、何か悩みがあるようだったからさ」
「そんな顔してた?」
「してたよ、悩みがあるなら相談に乗るけど?一応、この世界の住人のサポートも仕事のうちだから」
「でも、休暇中なんじゃ」
「休暇って苦手なんだよ、私は私を必要としてくれる人がいるということが重要だからね」
こういうの、ワーカーホリックってい言うんだっけ?仕事人間だなぁ。
「そういうことなら」
死んだあと、あの戦いはどうなったのか、誰か知り合いが転生してきてないか、調べてもらうことにした。
「少し待ってね」
「これですかね」
彼女がこちらに向けた画面には、かつて私も参加していた、願いを叶える鏡を奪い合う戦いのことが書かれていた。
「うわすごっ、これ、始まりから全部の戦いが記録されてるじゃん。誰が書いたのよこれ」
上から順番に読んでいき、ついに自分が死ぬところに来た。
『№34:カーティ=ロシャが夕飯でお腹を壊し、そのまま死ぬ、この戦いで死者が出てしまうとは思っていなかったが、これも必要な犠牲だったのだろう』
んん?ちょっと待って?これ何?私、もしかして殺されたんじゃなくて、晩御飯に当たって死んだの?いやいやいや、確かに私に死んだ時の記憶はないから、違うとは言い切れないけど、私の最後ってそんな感じだったの?
まぁ、いい。そんなことはどうだっていい、殺されたんじゃないことが分かっただけでもいい。納得はできないけど。
とりあえず、この後は一気に戦いの結末を見てしまおう。
『ついに最後、№79マスタ=ローダと№108ノア=オクスの戦いが始まった』
最後に残ったのはあの子達だったのか、私も戦ったことがあるが、納得の強さではある。
『我も最後である二人の戦いの前に姿を現し、二人の欲望を直に受けようとしたのだが』
我?もしかしてこれを書いたのって……。
『戦いに巻き込まれて我自身が破壊されてしまったようだ。戦いの目的であり、異能を授けていた我が失われたことにより彼女らの戦いは終わりを迎えることだろう。それを我が見届けることができなかったことが悔やまれる』
望みを叶える鏡自身がこれを書いたのか。あの鏡には自我があって、それが壊れたからこの世界に転生してきた。そして、この文章を書いたということね。
「ねぇ、えーっとターミナルの人」
「なんだい?」
「確か、人探しもしてもらえるんだよね?」
「いいよ、誰を探すんだい?」
「人じゃなくてもいいよね?私と同じ世界から転生してきた、願いを叶える鏡を」
「ああ、いつだったか鏡が転生してきたことがあったな。あれなら、ターミナルにまだあるはずだよ」
「案内して」
私が戦いの途中で死んでしまったのはきっとこのためだったんだ。
案内された先にあった願いを叶える鏡。それはかつて私に異能の力を授け、争いに誘ったそれと同じものだ。
やっとこの鏡を私の手に入れることができるんだ、戦いに勝ち残ったわけではないが、どうせ残った二人よりも私の方が強い。そして、今この世界には私以外の異能力者はいないし、私は実際のところ負けたわけではないしね。
「さぁ、願いを叶える鏡、最後に残った異能力者であるこの私の願いを叶えなさい」
「ん?あぁ、№34のカーティ=ロシャか、君もこの世界に転生していたんだね。我が与えた異能は確かに消えていないみたいだ、しかしなぁ」
「何か問題がある?私は戦いに負けたわけじゃないけど?」
「いや、確かに君が私を手にするということでも構わないのだが、如何せん、我の力がなぁ、この世界に来て失われてしまったのだよ」
「説明してくれる?」
「いやなに、我の願いを叶える力というのはだな、我を通して神に願うことで実現していたのだが、流石に異世界だとあの世界の神に願いを届けるということがな?できんのだよ。結果的に君が私を手にすることになったのも本来の手順ではないし、我を得た者の願いを叶えるという話はなかったことにならんかな?」
「割っても?」
「勘弁してほしい」
「しょうがないなぁ、まぁ死んだ時に願いを叶えることは諦めていたし、別にいいよ。この世界で叶えたい願いもないしね」
願いを叶える鏡は結局うちで普通に鏡として使うことにした。家で話し相手にもなるし、鏡としても歪みが少なくて良品だし。あと、みんなが転生してきた時に自慢してやろうと思う。
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