ブラッドライン

作者 山野ねこ

★★★ Excellent!!!

重厚な構成と筆致――ヘビーノベルの名にふさわしい。

第一話を読んだときはごく平凡な紛争政治劇ものかと思った。読み進めていくうち、それは間違いだと気づいた。
アメリカや中東だけでなく、平和を謳歌している国々の人々にもライトが当てられる。一見彼らは紛争に無関係に見える。
だが彼らも世界の一員であり、紛争の一端を握っているのだ。負い目を持っていない人間は何処にもいない。
その負い目の濃淡を描き出すことで、物語に立体的な膨らみが生まれている。
一話ごとに視点を変更する群像劇形式だが、ブラッドラインで死んだ有名ミュージシャン、Mを共通する話題としてストーリーは螺旋を刻む。
共通の話題で読者の興味を持続させる。上手い構成だ。
そして最終話。紛争の当事者たち、傍観者たち、全ての人間たちにまっすぐに重たいテーマを投げかける。作者はそこから逃げずに真っ向から勝負している。
Mの死は何かを変えたか。何か大事なことを変えたと言えるし、肝心なことは何も変えられなかったとも言える。
そしてそれは当然だ。たった一人で世界の全てなど変えられない。だが何か一つでも、誰かの心を響かせれば十分ではないか。
共鳴してくれる人が一人でもいれば十分ではないか。
「一粒の麦、もし死なずばただ一つにしてあらん。だがもし死なば、多くの美を結ぶべし」
見事な群像劇を描いた作者様に拍手を送りたい。次回作に期待しています。

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